“平均”では見えない賃金の格差―――日中の統計が明かす現実

中国国家統計局が発表した2024年の平均賃金統計では、都市部の非私営部門における年収が初めて12万元を突破した[1]。日本の総務省も同時期に賃金統計を公表しているが[3]、統計に表れる「平均値」には現実の生活実感との乖離が見られると指摘する意見が少なくない。
平均年収12万元時代に
※可比口径(kěbǐ kǒujìng):調査範囲や統計方法を一定に保ち、物価変動や対象範囲の変更などの影響を排除して比較できるように調整した指標

格差構造が顕著に
日本の厚生労働省が2025年3月に公表した「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の月額平均賃金は33万400円(前年比+3.8%)で、年収換算ではおよそ396万円に相当する[3]。
男女別では、男性が36万3,100円、女性が27万5,300円で、男女間の賃金格差指数は75.8(男性=100)となっている。また、正社員と非正規労働者の間にも明確な差があり、それぞれ34万8,600円と23万3,100円となっている。
企業規模別に見ると、大企業では36万4,500円、小企業では29万9,300円と、企業規模による格差も顕著である。さらに、学歴や年齢、勤続年数などによっても賃金水準は大きく異なり、日本の労働市場においても構造的な格差が根深く存在している。

“平均値”が隠すリスク
一方、中国では、情報通信や金融業といった都市部の特定産業を除けば、地方大学卒業生の初任給が月収4,000元前後にとどまるケースも報告されている。こうした傾向は、日本における非正規雇用者や中小企業勤務者の賃金水準が、平均値から大きく乖離している構図と重なる部分もありそうだ。
❖所得が低い業種:
出所:《2024年全国城镇非私营单位分行业门类就业人员年平均工资统计表》
“不安定な足元”は日中共通?
総じて見れば、中国では若年層の就職難が深刻化し、都市部の一部産業への就業集中や競争過熱、地域間・業種間における賃金の偏在といった構造的な課題が顕在化しているとされる。とりわけ、非私営部門における情報通信や金融業の平均年収が20万元を超える一方で、農業やサービス業では6万元台にとどまっている。
一方、日本では新卒者の早期離職や、労働者全体の約4割を占める非正規雇用の高さ、そして大企業と中小企業間の賃金格差など、「雇用の二極化」が続く構造的問題が根深い。とくに、正社員と非正規では月収ベースで約11万円もの開きがあり、平均値だけでは実態を捉えきれない。
さらに、AIや自動化の進展、少子高齢化といった社会構造の変化は、両国に共通して「労働のあり方」そのものに影響を及ぼしつつある。賃金の平均値上昇という表面の数字に惑わされることなく、課題解決に向けた動きが活発化することが期待される。(編集:耕雲)
[1] 国家统计局(2025年5月16日)「2024年城镇单位就业人员平均工资」
https://www.stats.gov.cn/tjsj/zxfb/202405/t20240516_1953781.html
[2] 国家统计局 人口和就业统计司 王萍萍(2025年5月)「2024年平均工资数据解读」
[3] 厚生労働省(2025年3月)「令和6年 賃金構造基本統計調査(概況)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
参考
【数据发布】2024年城镇单位就业人员年平均工资情况