「行列ができない地下鉄駅」を実現へ——上海で安全と時短を両立する「スマートサービス」が本格展開
鉄道点描
2026年2月18日

「行列ができない地下鉄駅」を実現へ——上海で安全と時短を両立する「スマートサービス」が本格展開

上海地下鉄16号線・龍陽路駅に設置された「スマートサービスセンター」で、処理時間が3.5分から1.2分に短縮。完全自動化ではなく「人間のぬくもり」を残した設計思想が注目される。


上海地下鉄・龍陽路駅で始動した「スマートサービスセンター」が、都市交通の難問に新たな解を示している。自動補票や免費通行など多機能を集約した端末により、通行時間は半減、人的資源は60%削減を達成。2026年2月現在、この取り組みは上海交通デジタル化転型計画の象徴的事例として、他駅への展開が進んでいる。


龍陽路駅に登場した「行列を消す」端末

身長1.3メートル以下の子どもとの免費通行、乗車券の自動補票――。これまで駅員を探して専用通路を開けてもらう必要があった手続きが、2025年8月、上海地下鉄16号線・龍陽路駅11号口に設置された「スマートサービスセンター」により一変した。

この端末の最大の特徴は、「通行時間の劇的短縮」にある。従来、専用通路(辺門)の開放には駅員を呼ぶ時間も含めて平均3.5分を要していたが、セルフサービス化により1.2分へと半減以上を実現。子どもを抱えた親が危険な改札機をすり抜ける必要もなくなり、安全性も向上した。

龍陽路枢紐站副站長の蘇明氏によれば、日平均客流量25万人次を超える同駅では、従来11号口の問い合わせ業務の75%が定型業務(切符関連、乗り換え案内、駅内施設案内など)で占められており、「大量の人的重複労働」が発生していた。スマートサービスセンターの導入により、人力資源を60%以上削減でき、スタッフはより複雑な対応に集中できるようになったという。


「自助+人工」の融合が生む"温度感"

このシステムの設計思想で注目すべきは、完全自動化ではなく「人間のぬくもり」を残した点だ。

大型スクリーンには、切符料金照会、切符処理、路線図、始発・最終列車時刻表、サービス案内、施設位置、落とし物センターなど多様な機能が並ぶ。利用者は自分で画面をタップして情報を得られるが、困ったときは「呼び出し(呼叫)ボタン」を押せば遠隔でスタッフと対話できる。

「高齢者やデジタル機器に不慣れな方への配慮です」と駅関係者は説明する。テクノロジーと人的サービスの共存により、効率と安心感を両立させる――この姿勢が、利用者から「冷たい機械ではなく、頼れる相棒」という評価を生んでいる。

導入以来、毎日70〜80人次が利用しており、特に切符処理機能の利用率が高い。演奏会や大型イベント後の人流疏散時に未刷卡で入場した乗客が、出場時に自動補票できる機能は、混雑緩和に大きく貢献している。


上海全体のデジタル化戦略の中で

龍陽路駅の成功は、偶然の産物ではない。上海市交通委員会が2024年5月に発表した「上海交通数字化転型実施意見(2024-2026年)」は、軌道交通、道路運輸、港湾など交通全体のデジタル化推進を掲げており、地下鉄のスマート化はその重要な柱となっている。

2026年2月現在、上海地下鉄は全21路線・517駅・896キロメートルの超大規模ネットワークで5G公衆信号を全線開通済み。さらに、2025年7月から「闸机常开门(改札機常時開放)」モードを123駅で試験導入し、通行効率を約20%向上させるなど、多方面でイノベーションを推進している。

龍陽路駅のスマートサービスセンターは、こうした施策の中でも**「機能の集約化」と「人的対応の最適化」**を両立させた先進モデルとして注目される。16号線の他駅への展開も始まっており、乗客からは「通行時間が短縮され、特に春運(春節期間の帰省ラッシュ)などピーク時に助かる」との声が上がっている。


「スマート×人間」の都市交通モデル

なぜ上海はこれほどまでにデジタル化を急ぐのか。

背景には、世界有数の人口密集都市としての切実な課題がある。2026年春運期間中、上海の鉄道駅では1日あたり約20万人次が移動し、地下鉄には膨大な負荷がかかる。従来型の人海戦術では限界があり、テクノロジーによる「スマート疏散」が不可欠となっている。

だからこそ、龍陽路駅のモデルは重要だ。それは単なる「無人化」ではなく、**「人間が本当に必要な場面で力を発揮できる体制」**を構築する試みだからだ。定型業務は機械に、複雑な判断は人間に――この役割分担こそが、持続可能な都市交通の鍵となる。

中国国内の他都市、さらにはアジアの大都市圏にとっても、上海の取り組みは示唆に富む。東京や大阪、ソウルといった混雑に悩む都市では、同様のアプローチが応用可能だろう。テクノロジーは「人を排除する」ためではなく、「人をより人間らしい仕事に解放する」ために存在する――龍陽路駅が体現するのは、そんなメッセージだ。


参照情報源

  1. 上観新闻(解放日報)「上海地铁宣布:正式投入使用!市民激动:通行时间缩短一半」(公開日: 2025年9月21日)
    URL: https://www.jfdaily.com/sgh/detail?id=1637547

  2. 上観新闻(解放日報)「"智慧服务中心"投入使用,轨交龙阳路站服务升级」(公開日: 2025年9月頃)
    URL: https://www.jfdaily.com/sgh/detail?id=1629090

  3. 上海市交通委員会「上海交通数字化转型实施意见(2024-2026年)」(発表日: 2024年5月14日)
    URL: https://jtw.sh.gov.cn/zxzfxx/20240514/0849280ead034f9b89896159e59ec5d1.html

  4. 上観新闻「扩容费区面积:上海地铁多座车站升级改造提升通行效率」(公開日: 2026年2月5日)
    URL: https://www.jfdaily.com/sgh/detail?id=1705308

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