今週の編集後記一覧

日付配信タイトル編集後記の主題
2026年6月15日 青空は突然には戻らない 省エネ週間、青空、都市の緑、政策と投資の蓄積
2026年6月16日 和菓子と中華デザートの境界線 和菓子の日、杏仁豆腐、炸饅頭、和中折衷の味覚
2026年6月17日 砂漠化の処方箋、「治未病」の知恵 砂漠化、治未病、森林政策、都市緑化の日中比較
2026年6月18日 おにぎりの中の越境 おにぎりの日、米・包装・海苔・物流に透ける越境性
2026年6月19日 端午節:旧暦が市場を動かす日 端午節、旧暦、検索量、旅行・外食・交通消費
2026年6月20日 初夏を彩る「よもぎ」と「薄荷」の香り 薄荷、北見、端午節の艾草、香りに残る暮らしの知恵
2026年6月21日 夏至の麺、短い夜の観戦食 夏至、麺の字、蕎麦・米線、観戦食としての食文化

各日の編集後記

2026年6月15日

青空は突然には戻らない

青空は突然には戻らない

中国では今日から「全国省エネ啓発週間(全国节能宣传周)」が始まる。そんな折、ある駐在員の言葉をふと思い出した。2010年代初頭に上海で勤務し、その後帰国、近年再び上海に赴任してきた方である。久しぶりの滞在で最も驚いた変化は何かと聞くと、「青空が頻繁に見えるようになったことです」と答えた。

PM2.5が深刻だった時期と比べると、たしかに空気の質は断然良くなった。ガソリン車の比率は下がり、排ガスの臭いを気にすることはまずない。森林面積は広がり、主要都市では街路樹や樹冠率の向上も進む。

ちなみに、東京では街路樹の本数が2002年の約679万株から2022年には約629万株へ減ったという。20年間で約50万株、7%余りの減少である。日本は「森の文明」と呼ばれている。だが、都市の緑の減少を見ると、そこにも失われた30年の影が差しているのではないか。青空も木陰も、突然戻るものではない。政策と投資の積み重ねがつくる未来の風景である。

2026年6月16日

和菓子と中華デザートの境界線

和菓子と中華デザートの境界線

1990年代、上海で外食時によく注文したのが「炸饅頭」である。饅頭を切り刻んで揚げ、練乳を添えて食べる一皿だった。これをデザートと呼んでよかったのか分からない。だが、選択肢がほかになかった。日本の中華レストランでおなじみだった杏仁豆腐にお目にかかることがなかったのだ。

店の人に尋ねても何のことかと首をひねる。本来、中国では杏仁を用いた薬膳系の一品であることを知った。それが日本では、牛乳寒天にアーモンドエッセンスを加え、果物を添えたフルーツポンチ風のみつまめのようなものに変化した。日本人の記憶の中にある杏仁豆腐は中華料理とは別次元のものだったのだ。

では、日本発の杏仁豆腐が和菓子なのかというと、これまたややこしくなる。私たちは「杏仁とうふ」ではなく、「杏仁どうふ」と呼んでいる。中国語を存分に意識した音の響きであり、中華デザートと思い込む人が多いのは不思議ではない。

「和洋折衷」だけでなく、日本の食卓で独自に根を張った「和中折衷」の味覚には他にどんなものがあるのだろう。あるいは、カルフォルニアロールといえば「寿司の現地化」の事例として有名だが、「和食の中華化」を探索するのも面白そうだ。

2026年6月17日

砂漠化の処方箋、「治未病」の知恵

6月17日は「世界砂漠化および干ばつと闘う国際デー」。これは地球規模の「治未病」を考える日でもある。緑を増やす。木を植える。日本はしばしば「森の思考」の国といわれるが、戦後の拡大造林では成長が早く建材になるスギが多く選ばれた。その結果、森は増えたが、花粉症という別の未病を抱え込んだ。

中国の「緑の長城」と呼ばれる三北防護林プロジェクトは、砂漠化や風砂を抑える長期の生態事業である。近年は単一樹種ではなく、土地に合う樹種を選び、草や灌木も組み合わせる方向が強調されている。東京の街路樹が思ったほど増えていないことを考えると、都市緑化を大胆に進めた中国との対比は、この四半世紀の静かな逆転にも見える。日本を他山の石とし、病になる前に手を打つ。そこに「治未病」の怜悧さがある。

2026年6月18日

おにぎりの中の越境

手のひらの三角形が映す空洞

6月18日は「おにぎりの日」である。石川県中能登町の杉谷チャノバタケ遺跡で見つかった「チマキ状炭化米塊」にちなむ、素朴な記念日だ。

ところが、その素朴さを支える足元が揺れている。2026年6月、コメ価格は落ち着きを取り戻しつつある。だが、おにぎりの値札は米だけで決まらない。包装フィルムはナフサ供給不安と原油高に左右され、配送には燃料費が乗る。さらに海苔は国内不作で単価が上がり、近年は韓国などからの輸入量も増えている。

無形文化遺産にもなっている和食を構成するだろう「おにぎり」。手のひらのこの三角形は、もはや純粋な「Made in Japan」とは言い切れない。農業、水産、包装、物流の空洞化が、最も身近な昼食にまで静かに透けている。

2026年6月19日

端午節:旧暦が市場を動かす日

旧暦が市場を動かす日

今日は旧暦5月5日に当たる。中国では「端午節」である。粽を食べ、龍舟を競うこの節日は、いまや民俗行事にとどまらず、旅行、外食、土産品、EC、交通を動かす消費の起点でもある。

報道によれば、「端午」「龍舟」「粽子」関連キーワードの検索量は前月比1.5倍に伸びたという。日曜日までの3連休を利用し、近場の旅行や帰省に向かう人も少なくない。旧暦の祝日がこれほど明確に経済を動かすところに、中国社会の暦感覚が表れている。

一方、日本の6月19日は「元号の日」でもある。645年のこの日、日本初の元号「大化」が定められたことに由来する。周知のとおり、日本では元号という紀年法が、行政手続きや公文書、社会の記憶をいまもつないでいる。

2026年6月20日

初夏を彩る「よもぎ」と「薄荷」の香り

6月20日は「ペパーミントの日」である。北海道・北見市にちなむ記念日だ。「ペパーミント」を中国語で表すと「薄荷(bòhe)」となる。この言葉を日本語読みした「ハッカ」という呼称は以前ほど耳にしなくなったが、ハッカ油やハッカ飴などにその名を残している。

実は北海道は、かつて世界有数のハッカ生産地だった。1930年代には世界市場の大きなシェアを占め、「薄荷王国」と称されるほど繁栄したという。現在も北見地方では、その歴史を受け継ぐ製品や文化が地域の特色として息づいている。

一方、中国では先日、端午節を迎えた。端午節には艾草(ヨモギ)を門口に飾り、その香りで邪気を払い、家族の健康を願う風習がある。日本にも端午の節句に菖蒲湯へ入る習慣が残るように、香りの力を暮らしに取り入れる知恵は東アジアに広く共有されてきた。

ペパーミントの日をきっかけに「薄荷」という言葉をたどると、北海道の薄荷王国の記憶だけでなく、中国の端午節に漂う艾草の香りにも行き着く。爽やかな香りの背後には、国境を越えて受け継がれてきた人々の暮らしの知恵が息づいている。

2026年6月21日

夏至の麺、短い夜の観戦食

夏至の麺、短い夜の観戦食

端午節を過ぎ、暦は夏至へ進む。粽が主役だった食卓も、中国語でいう「冬至餃子夏至麺」の季節に入る。面白いのは、この「麺」という字である。簡体字では「面」となり、麦の部分がすっかり削ぎ落とされる。

字源にこだわれば、小麦由来ではない「そば」を麺と呼ぶのは妙だろうか。それでも実用の世界では「荞麦面」はれっきとした麺の一員である。

むしろ迷うのは、米を原料とする「米线」だ。ヌードルなのか、麺なのか、粉なのか。時はワールドカップのグループリーグ真っ盛り。長い昼のあと、短い夏の夜をどの一杯で観戦するか。それもまた、東アジアの小さな食文化論である。

あとがき

この週の編集後記を並べると、日中ビジネスの話題は数字や制度だけでは完結しないことが見えてきます。青空、菓子、森、おにぎり、旧暦、香り、麺。どれも小さな入口ですが、その背後には政策、物流、都市、記憶、消費の流れがあります。週末に読み返す意味は、ニュースの速度から少し離れ、暮らしの言葉で社会を見直すことにあります。

使用情報源

  • 日中BizNavi noteマガジン(対象期間:2026年6月15日〜2026年6月21日)
    https://note.com/ms_kohn/m/m515bac9a2737
  • 2026年6月15日:日中BizNavi|2026年6月15日|青空は突然には戻らない
    https://note.com/ms_kohn/n/n3eae0e4c9bac
  • 2026年6月16日:日中BizNavi|2026年6月16日|和菓子と中華デザートの境界線
    https://note.com/ms_kohn/n/n6d2a3a90424a
  • 2026年6月17日:日中BizNavi|2026年6月17日|砂漠化の処方箋、「治未病」の知恵
    https://note.com/ms_kohn/n/nbb930a770e76
  • 2026年6月18日:日中BizNavi|2026年6月18日|おにぎりの中の越境
    https://note.com/ms_kohn/n/n69eefdb24d52
  • 2026年6月19日:日中BizNavi|2026年6月19日|端午節:旧暦が市場を動かす日
    https://note.com/ms_kohn/n/n061f3344097c
  • 2026年6月20日:日中BizNavi|2026年6月20日|初夏を彩る「よもぎ」と「薄荷」の香り
    https://note.com/ms_kohn/n/nfcd891c3d6f2
  • 2026年6月21日:日中BizNavi|2026年6月21日|夏至の麺、短い夜の観戦食
    https://note.com/ms_kohn/n/n642a3a6da41c

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