大型店「再配置」という名の退潮
IKEA中国は2026年2月2日から上海宝山、広州番禺、天津中北、南通、徐州、寧波、ハルビンの7店舗を閉鎖する。日本経済新聞によれば、1998年の中国進出以来「最大規模の閉店」で、現有41拠点の約6分の1に相当する。同社は「撤退ではなく、コスト最適化と資源再配置」と説明し、今後2年で北京と深圳を重点市場として10店舗以上の小型店舗を出店する計画である。
伝統的外資大型店の退潮はIKEAにとどまらない。カルフールは2022年に205店から151店へと54店(26%)減少し、上海でもピーク時の40店超から大幅に減少した。記事執筆時点で詳細な最新店舗数は確認できないが、2023年時点でカルフール古北店などわずかな店舗のみが営業を続ける状況が報じられている。ウォルマートも過去5年で全国130店超を閉鎖した。
会員制倉庫型が「勝ち組」の理由
外資系でも明暗は分かれる。逆張りで拡大するのがコストコとサムズクラブである。コストコは2025年8月末時点で中国大陸7店舗を展開し、上海・蘇州・杭州・寧波・南京・深圳の6都市をカバーする。2026年度は全世界で35店の新規出店を計画している。
さらに目覚ましいのがサムズクラブの攻勢である。ウォルマート傘下のサムズクラブは2025年に中国で63店舗に達し、年間10店の新規出店を達成した。2026年はさらに14店の開設を計画し、広州荔湾店や北京昌平店など重点都市への展開を加速する。会員数は2020年の300万人から2024年末には860万人へと3倍近く増加した。
本土勢の「供給チェーン革命」
外資の隙を突いて台頭するのが本土の新興勢力である。上海では清美集団傘下の「品上生活」が既に3店を展開し、2026年は10店超を新設、長期的には30商圏超をカバーする計画である。同社の戦略は自社農場・中央キッチン・冷鎖配送を統合した供給チェーン構築にある。自営・自社ブランドによりコストを20〜30%削減し、粗利益率を10〜15%向上させる。
2026年の小売競争は「下沈(地方都市進出)」「自有品牌(プライベートブランド)」「即時零售(即時配送)」「硬折扣(ハードディスカウント)」が4大キーワードである。盒馬(フーマー)は2026年に鮮生店を100店近く新設し、奥楽斉(アルディ中国)は第1四半期に100店を突破する見込みである。いずれも供給チェーン効率と自社ブランド比率を武器とする。
化粧品・飲食でも鮮明な明暗
化粧品市場では外資ブランドの退潮が鮮明である。2025年に中国市場で閉店・撤退した美容ブランドは30〜40個に上り、コルゲート傘下の仏ブランドFilorgaも2026年1月1日に天猫旗艦店を閉鎖した。閉店ブランドの約8割が日韓ブランドで、背景には国産ブランドの台頭がある。
中国化粧品市場では2025年、国産ブランドのシェアが57.03%に達し、外資ブランドの42.97%を初めて上回った。2024年比で国産が1.29ポイント増、外資が1.29ポイント減と、シェア逆転が鮮明である。消費者の理性化と「洋ブランド」プレミアムの失効が主因である。
飲食業界も対照的である。くら寿司は2023年6月の上海1号店以来わずか3店を展開したが、2025年6月に全店撤退を決定した。累計損失は8190万元に達した。「モデルの画一的コピー」「価格設定」「現地化不足」が敗因とされる。
サイゼリアも着実に拡大している。2025年度末時点で上海197店、広州222店、北京78店を展開する。2035年までに1000店規模へ倍増させる計画で、広州では約3000万ドル(約44億円)を投じた新工場建設が進行中である。低価格でありながら安定した品質を提供する「調理済み食品モデル」が、合理的消費を志向する中国消費者に受け入れられている。
ただし、出店加速による客流の分散が既存店売上を押し下げているとの指摘もある。飽和気味の大都市から地方(2・3線都市)へのシフトが今後の成否を握るとの見方もある。
「適応力」が生存を決める新時代
中国小売市場の構造転換は、単純な「外資撤退vs本土台頭」の図式では語れない。コストコ・サムズクラブ・スシロー・サイゼリアが示すのは、外資でも供給チェーン統合力と「コストパフォーマンス」提供力があれば成長できるという事実である。逆にIKEAやカルフールの苦境は、大型店モデルと棚代依存が限界を迎えたことを示す。
本土勢の強みは、デジタル即時配送・自社ブランド・地域密着型小型店という「三位一体」戦略にある。品上生活や盒馬は、伝統的外資が持たない供給チェーンの垂直統合力で差別化する。



