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2025-11-20

中国出張、まずはスマホから――入国カードオンライン化、何がどう変わるのか



中国入国カードオンライン申告

中国出張、まずはスマホから――入国カードオンライン化、何がどう変わるのか

2025年11月20日
2025年11月20日、中国国家移民管理局の新施策により、外国人入国カードのオンライン申告が始まった。従来は機内や空港で紙のカードに記入していた入国情報が、渡航前にウェブサイトやアプリ、WeChat/Alipayミニプログラムから事前登録できるようになった。利便性向上の一方で、「臨時宿泊登記」は引き続き必要になる。日本のVisit Japan Webとはどこが違うかもチェックしよう。

1. 何が変わったのか:入国カードのオンライン申告スタート

中国国家移民管理局は11月3日に「開放拡大およびサービスの質の高い発展を支援する10の新施策」を発表し、その一つとして「外国人入国カードのオンライン申告」を導入した。これにより、2025年11月20日から、外国人は中国到着前にオンラインで入国カード情報を提出できるようになった。

オンライン申告が可能な公式チャネルは以下の通りだ。

  • 中国国家移民管理局(NIA)の政府ウェブサイト
  • 政府サービスプラットフォーム
  • 「移民局12367」アプリ
  • WeChat(微信)・Alipay(支付宝)のミニプログラム
  • 携帯端末で「入国カード提出コード」をスキャンしてアクセスする方式

一方で、オンライン申告を利用しない、あるいは利用できない場合でも、次のいずれかの方法で従来通り申告できる。

  • 入国審査場に設置されたQRコードをその場で読み取り、スマホでオンライン入力
  • 空港等に設置されたスマート端末(キオスク)で入力
  • これまで通り、紙の「外国人入国カード」に手書きで記入
重要:2025年11月20日時点では「全面オンライン義務化」ではなく、「オンラインを含む複数チャネル化」である点が重要である。

2. 制度導入の狙い:開放路線と「通関の見えるDX」

今回のオンライン申告は、単発の利便化施策ではなく、「開放拡大」「通関円滑化」「人材の越境移動促進」といったより大きな政策パッケージの一部として位置づけられており、審査効率の向上や行列時間の短縮が期待されている。国家移民管理局が発表した10項目には、港湾でのトランジット免ビザ口岸の拡大や、港澳台(香港・マカオ・台湾)人員の往来手続き簡素化なども含まれ、「人の流れのDX(デジタルトランスフォーメーション、Digital Transformation)」がテーマになっている。

邦人ビジネスパーソンの視点から見れば、

  • 出張・駐在・視察で中国を往来する人の「入国プロセス」を、前倒しで準備できるようになる
  • 現地側(中国企業・現地法人)も、来訪者の入国フローを説明しやすくなる

という意味で、実務上の摩擦が一段和らぐ可能性がある施策だといえる。

3. オンライン申告で何が便利になるのか

3-1 入国前に机の上で落ち着いて入力できる

これまで紙の入国カードは、機内で配布された用紙に記入するか、到着後の入国審査場で書き込んだりするケースが多かったが、いずれも慌ただしい作業だった。それがオンライン申告が導入されたことで、出発前の余裕があるときに、落ち着いた環境でパソコンやスマホから情報の入力ができるようになった。

記入が求められる主な情報は、

  • 旅券情報(氏名、番号、生年月日、国籍など)
  • ビザ種別や入国口岸、便名、到着日時
  • 中国での滞在先住所(ホテル名と住所、友人宅など)
  • 渡航目的(観光・商用・留学・訪問など)
  • 連絡先(電話番号など)

といった従来と同様の項目だ。一方でオンラインフォームでは多言語対応や自動チェック機能が整備されることで記入ミスを減らしやすい。

3-2 行列を減らせる可能性

国家移民管理局や各地の報道は、「事前に入国カードをオンラインで提出しておくことで、現場での入力時間がなくなり、通関効率が上がる」と説明している。

もちろん、入国審査そのものにかかる時間は別問題であり、行列が即座に解消されるとは限らない。しかし、

  • 「書き始めてから審査ブースにたどり着くまで」の時間
  • ペンや用紙、記入台の不足による小さなストレス

といった部分については、オンライン申告により確実に軽減されると考えられる。

4. オンライン申告の注意点:万能ではない

4-1 「7つの免除ケース」を確認する

中国国内向けの解説では、外国人入国カードの記入自体が免除されるケースとして、以下の7類型が整理されている。

  • 中国の永久居留身分証(いわゆる「中国版グリーンカード」)を持つ者
  • 一部の「港澳通行証」等を持つ外籍者
  • 外国人団体ビザ・団体免ビザでの入国者
  • 24時間以内に口岸エリアを出ずに乗り継ぐトランジット旅客
  • クルーズ船で入港し、その船で出国する団体旅客
  • 指定された「ファストトラック(快速通道)」を利用する者
  • 国際線の船員・航空機乗務員

邦人の一般的な出張・観光の場合は、原則として入国カードの提出対象になるため、「自分は免除に該当するのか」を事前に確認しておく必要がある。

4-2 スマホ依存リスク:電池と通信

オンライン申告は便利である一方、スマホ依存度が高まる。

  • 機内モードのままQRコードが開けない
  • 到着空港のフリーWi-Fiが混雑でつながらない
  • スマホの電池残量が不足している

といった状況では、せっかく事前申告しても画面を提示できず、現場で再入力や紙のカード記入が必要になる可能性がある。そのため、申請完了画面やQRコードのスクリーンショット保存を強く推奨するアドバイスもよく見かける。

5. 「臨時宿泊登記」は別問題:派出所への届け出は相変わらず必須

なお、気をつけたいのは、今回の「オンライン入国カード」は、あくまで入国時の審査用情報を事前に提出する仕組みであり、中国国内での「臨時宿泊登記」のルールを置き換えるものではないことだ。

中国の出境入境管理法第39条は、

  • ホテルに宿泊する外国人については、ホテル側が公安機関への宿泊情報報告を行う義務
  • ホテル以外(友人宅、社宅など)に宿泊する外国人については、入居後24時間以内に本人または宿主が公安機関(派出所)等で「宿泊登記」を行う義務

を規定しており、違反した場合は警告や罰金の対象になり得る。

日本の在外公館や現地専門家の解説でも、

  • 出張や一時帰国から戻った際にも、その都度「臨時宿泊登記」が必要
  • ホテル以外に宿泊する場合は、宿主と一緒に派出所へ行く、あるいは地域によってはオンライン登記が提供されている

といった運用が繰り返し注意喚起されている。

重要:オンライン入国カードは、「国境をまたぐ瞬間」の手続きをスムーズにし、臨時宿泊登記は「中国国内で寝泊まりする場所」の管理を行う仕組みであり、目的と法的根拠が異なる制度であることを、いま一度留意しておきたい。

6. 日本のVisit Japan Webと比較するとどう見えるか

6-1 共通点:入国関連情報の「事前オンライン登録」

今回中国が提供を始めたサービスを、「日本版Visit Japan Web(VJW)」と解釈する人は少なくないだろう。

VJWは、デジタル庁が提供する入国手続き用ウェブサービスであり、

  • 入国審査に必要な「外国人入国記録(EDカード)」
  • 税関申告(携帯品・別送品申告書)
  • (感染症流行時など、必要に応じて検疫関連の情報入力が追加されることもあり得る)

などを事前にオンライン登録し、空港ではQRコードを提示するだけで通過できる仕組みである。

中国のオンライン入国カードも、

  • 入国審査に必要な外国人入国情報をオンラインで事前提出
  • 空港でQRコードや確認画面を提示

という構造自体はよく似ているといえる。

6-2 相違点:紙の扱いと対象範囲

ただし、現時点での運用にはいくつか違いがある。

項目日本中国
紙の利用Visit Japan Webを使わなくても、紙のEDカード(外国人入国記録)や紙の税関申告書による手続きが引き続き可能2025年11月20日時点では、外国人入国カードのオンライン申告は「追加された新チャネル」であり、紙の入国カードも継続利用できる
ワンストップ処理主要空港では「共同キオスク」と呼ばれるワンストップ端末が導入され、VJWのQRコードとパスポートを読み込むことで、入国審査と税関申告を一体的に処理できる仕組みが整いつつある同じ10項目施策のなかで、顔認証ゲートなどのスマート通関の導入も進められているが、入国カードオンライン申告とは別の施策として実装されている

総じていえば、

  • 日本は、VJWと共同キオスクの組み合わせにより、「入国審査+税関申告」を一気通貫でデジタル化している段階
  • 中国は、まず「入国カード情報」をオンライン化しつつ、顔認証ゲート等のスマート通関を別レイヤーで進めている段階

という違いがあると整理できる。

7. 制度導入初日の空港はどうなるのか

本稿執筆時点(2025年11月20日)では、オンライン入国カード制度の初日における具体的な混雑状況や平均待ち時間などの統計は、公的にはまだ公表されていない。

一方で、先行してスマート通関やオンライン手続きが導入された他空港の事例では、

  • 顔認証ゲートの導入により「数秒で通過できる」といった利用者コメントが報道されていること
  • たとえば、240時間ビザ免除トランジットの対象となる各空港では、オンライン入国カードの活用を通じて通関効率の向上が図られると説明されている。

が確認できる。

したがって、

  • システムの立ち上がり期には、現場スタッフや旅客側の不慣れにより、一時的な混乱や「オンラインなのに逆に時間がかかる」ケースもあり得る
  • ただし中長期的には、紙の記入に比べて「入力プロセスの前倒し」という意味での効率化は期待できる

という程度に留めておくのが、2025年11月20日時点での現実的な見立てである。

8. 邦人ビジネスパーソンへの実務アドバイス

最後に、在留邦人が押さえておきたい要点を整理する。

✓ 出発前に公式ルートからアクセスすること

NIAの公式サイトやアプリ、WeChat/Alipayミニプログラムなど、公式チャネル以外の「なりすましサイト」に注意する必要がある。

✓ QRコードは必ずスクリーンショット保存すること

空港の通信状況やアプリのログアウトなどを考えると、オフラインで表示できる形で保存しておくことが安全である。

✓ ホテル情報・連絡先は最新のものを入力すること

宿泊先変更時には、オンライン入国カードの再入力が必要になる場合がある。

✓ 「臨時宿泊登記」は別手続きとして忘れないこと

ホテル以外に泊まる場合は、到着後24時間以内に派出所等での宿泊登記が必要であり、オンライン入国カードとは別の義務である。

✓ 日本との比較で「感覚」をアップデートすること

台湾、韓国、東南アジア各国でも入国カードのオンライン化が進んでいるなか、中国と日本の両方が「紙+オンライン併用期」にあるという全体像を踏まえておくと、出張計画の立案や社内説明もしやすくなる。

最後に

今後、実際に上海・北京・広州など主要空港での運用状況や、邦人の利用体験が出そろってくれば、「どのタイミングで入力するのが最もスムーズか」「どのミニプログラムのUIが使いやすいか」といった、より具体的なノウハウも共有できるようになるはずだ。

現時点では、制度の骨格とリスクポイントを正確に押さえつつ、早めに「オンライン前提の渡航フロー」に頭を切り替えておくことが重要だといえる。

編集:耕雲




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