日本政府・与党は2026年度内に訪日外国人向けのビザ申請手数料と出国税(日本人にも適用)の大幅な引き上げを実施する方向で検討している。一方で、日本人のパスポート取得手数料については値下げを進める方針。オーバーツーリズム対策の財源確保と国民生活のバランスを取る政策転換が進行中だ。具体的な引き上げ幅や時期は、年末に策定される税制改正大綱で固まる見通しである。
国際水準との大きな乖離
日本のビザ申請手数料は、国際的に見ても著しく低い水準にとどまっている。現在、日本のビザ申請手数料は短期滞在査証で3,000円程度だが、米国の観光・商用ビザは185ドル(約2万8,000円)、英国の短期滞在ビザは127ポンド(約2万6,000円)、シェンゲン圏の短期査証は90ユーロ(約1万6,000円)前後と、主要先進国の手数料は日本の3倍から9倍に達しているとされる。
| 国・地域 | ビザ手数料 | 日本との差 |
|---|---|---|
| 米国 | 約28,000円 | 約9.3倍 |
| 英国 | 約15,000円 | 約5.0倍 |
| フランス | 約12,000円 | 約4.0倍 |
| ドイツ | 約10,000円 | 約3.3倍 |
| 日本 | 約3,000円 | 基準 |
訪日外国人の増加に伴い、ビザ発行に要する事務コストも増加している。同時に、観光地の混雑や地域住民の生活環境への悪影響といった「観光公害」が深刻化しており、これに対応するための財源確保が急務となっている。政府は米国や欧州諸国の水準を参考にしながら、2026年度内に引き上げを実施する方針を示しており、その具体的な料金水準を今後詰めていく段階にある。
出国税は1,000円から3倍、ビジネスクラスは5倍案
より急激な変化が見込まれるのが、出国税(国際観光旅客税)である。2019年に導入された出国税は、現在一律1,000円が徴収されているが、政府・与党は2026年度中にこれを大幅に引き上げる方針だ。自民党観光立国調査会の決議によれば、一般の旅行者については1人1回あたり3,000円程度に、ビジネスクラスやファーストクラスを利用する旅行者については5,000円とする案が検討されている。
| 区分 | 現行税額 | 検討されている引き上げ案 |
|---|---|---|
| 一般 | 1,000円 | 3,000円以上(3倍) |
| ビジネス/ファーストクラス | 1,000円 | 5,000円(5倍) |
この引き上げは、訪日外国人と日本人の双方に影響を与える。出国税は日本から出国するすべての人が対象であり、日本人が海外に渡航する際にも同じ負担が生じるからだ。増収分は、観光地の混雑緩和や環境保全、地域住民の生活環境改善といったオーバーツーリズム対策に充当される方向で議論が進んでいる。
パスポート手数料の値下げで負担増を緩和
出国税の大幅な引き上げは、海外渡航をする日本人にとって新たな経済的負担となる。政府がこの影響を緩和するため検討しているのが、日本人のパスポート取得手数料の値下げである。現在、10年有効の一般旅券の発行手数料は1万5,900円だが、ここから1万円程度の値下げを行う案が浮上しており、これにより出国税引き上げによる負担増を部分的に相殺する狙いがある。
政策的バランスの戦略的な意図
3つの政策の組み合わせには、明確な戦略的意図が読み取れる。訪日外国人からの徴収増(ビザ手数料・出国税)と日本人への負担軽減(パスポート手数料値下げ)を組み合わせることで、オーバーツーリズム対策の財源を確保しながら、国民の海外渡航意欲を極力削がない設計になっているからだ。
年末に策定される税制改正大綱では、これらの政策がどの程度の規模で、いかなるスケジュールで実施されるかが最終決定される。政府・与党は、観光産業の持続可能な発展と国民生活のバランスを取りながら、日本の観光戦略を次のステージへ進める方針を示しており、今後の議論の行方が注目される。
今後の検討スケジュール
現在
年末
内に実施
現在、政府・与党は11月中旬の段階で政策案の検討を進めており、年末の税制改正大綱策定に向けて議論が加速している。ビザ申請手数料については2026年度内の引き上げ実施を目標とし、出国税についても2026年度のできるだけ早い時期の改定をめざす方針だ。具体的な引き上げ幅や実施時期は、税制改正大綱および関連法案の審議を通じて確定していくことになる。(編集:耕雲)


