スタバに続いてバーガーキングも……中国で“任せて稼ぐ”モデルへシフトへ


スタバに続いてバーガーキングも……中国で“任せて稼ぐ”モデルへシフト
2025年11月、スターバックスとバーガーキングが中国事業で相次ぎ大型提携を発表した。スターバックスは中国小売事業の持分のうち最大60%を博裕投資に売却し、中国リテール事業の企業価値は130億ドル超と評価されている。バーガーキングは中国事業の83%をCPE源峰に譲渡し、CPEは初期投資として3.5億ドルを拠出する。いずれの動きも狙いは軽資産化と本土化であり、ローカルブランドの台頭と需要構造の変化に、より素早く対応できる布陣へ切り替える試みである。
市場の現状
中国の外食市場はなお成長を続けている。2024年の市場規模は6.4兆元に達し、2025~2030年は年率5%超で拡大するとの予測もある[1]。
一方で競争は急速に激化した。スターバックスの中国シェアは2019年の34%から2024年には14%まで低下し、ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)などが9.9元の低価格プロモーションと高速出店によって需要を取り込んだ影響が大きい[3]。
加えて、レストラン×リテールの融合も新たな収益源として拡大している。2021年に3,000億元規模だった「外食発のリテール商品+EC・量販チャネル」の市場は、2026年には1兆元超へ向かうとの見立てもあり[2]、店舗内外でのブランド接点をどう設計するかが勝敗を分ける局面に入っている。
軽資産化の論理
両社に共通するのは、直営投資を絞り、ブランドと知財に軸足を置くモデルへの移行である。スターバックスは博裕投資に過半の持ち分を譲り、自身は少数株主として残る構図を採る。経営陣は「8000店から2万店超への成長」を見据えながら、成長投資の資本負担を本土側と分担する姿勢を鮮明にしている[3]。
バーガーキングは、CPE源峰が83%を取得し、RBIは17%を保有する。CPEは3.5億ドルを投じ、現在約1,250店のネットワークを5年で2,500店に、2035年までに4,000店超へ拡大する計画である。2020年の主開発権契約とあわせて見ると、中国市場を長期の成長ドライバーとみなし、ローカルパートナーとともに育てる前提が確認できる[4]。本社にとっては、資本効率の向上とともに、規制・需要変動リスクの分散というメリットが大きい。
① 資本効率の向上:成長投資の大部分を本土パートナーに委ね、グローバル本社は手元資本を他地域・他ブランドへより効率的に配分できる。
② リスク分散:規制変更や、消費者心理の急変などのリスクを本土パートナーと共有しつつ、ポートフォリオ全体のボラティリティを抑制できる。
③ 市場対応スピード:本社はブランド・知財・グローバルガバナンスに特化し、店舗運営・ローカルマーケティングは現地側が担うことで、商品・価格・販促のPDCAを高速化できる。
本土パートナーの役割
博裕投資とCPE源峰は、単なる資金提供者ではない。両社には、中国の需要動向や低階級都市(二級・三級以下都市)開拓、デジタル決済と連動した店舗運営を実装する能力が期待されている。
アリペイ(Alipay)やWeChat Pay(微信支付)を起点に注文・会員・データ分析を接続し、メニューや価格を地域特性に即して高速に最適化することで、供給網と販促の両面でコストと歩留まりを改善できるからである[2][7]。
• 消費者心理への適応:地域ごとの嗜好変化や価格感応度を、リアルタイムのデータで把握し、商品構成と価格帯に反映する。
• デジタル戦略の統合アリペイやWeChat Payとの連携を通じて、注文・決済・会員・クーポン配信を一体運用し、LTV(顧客生涯価値)を最大化する。
• 供給網の最適化:ローカルサプライヤーとの関係構築、在庫・物流の高度化により、原価と廃棄リスクを圧縮する。
• 低階級都市開拓:地域特性に合わせた店舗フォーマットや価格帯を設計し、全国一律モデルでは届きにくい層を取り込む。
長期視点と先行事例
RBIは中期戦略としてネット店舗数の5%超成長を掲げており、中国での出店加速はこの方針と整合的である[4]。
先行事例としては、マクドナルドが2017年に中国本土・香港事業の80%を投資家に売却し、ブランド管理とライセンスに特化、オペレーションは本土側が担う分業体制に切り替えたケースがある。このモデルは、その後の安定した出店ペースと収益性改善につながったと評価されている[3]。
今回のスターバックスとバーガーキングの2件は、こうした「資本提携+運営分業」モデルの再現・アップデートを志向しているとみてよい。
日本企業への示唆
では、この一連の動きから日本企業が汲み取るべき教訓は何か。
第一に、パートナーは「資本+運営力」で選ぶべきである。単に資金力があるかどうかではなく、消費ブランドのスケール経験、ローカル市場インサイト、オペレーショナル・エクセレンスを兼ね備えているかを条件とする必要がある。
第二に、ブランド価値は本社が守り、価格・メニュー・供給網・デジタル統合は本土側に委ねる役割分担を徹底することだ。ブランドの世界観や品質基準は本社が一元管理しつつ、現場の出し方はローカルに任せる「境界線の引き方」が問われる。
第三に、短期のKPIに偏らず、主開発権や長期契約で市場適応の時間軸を確保することである。中国市場では、テスト・失敗・再設計のサイクルを何度も回す覚悟がないと、ローカル勢との競争に耐えられない。
✓ パートナー選定基準:消費ブランドのスケーリング経験、ローカル市場インサイト、オペレーショナル・エクセレンスを必須条件とする。
✓ ブランド価値の保護:本社は知財・ブランド管理に専念し、運営・マーケティングは本土パートナーに委ねる明確な分業を設計する。
✓ デジタル戦略の統合:アリペイやWeChat Pay、ミニプログラム等との統合設計を、本土パートナーの強みとして取り込み、CDP(顧客データ基盤)を共通インフラと位置づける。
✓ 長期コミットメント:主開発権や長期JV契約を通じて、少なくとも10年単位の市場学習の時間軸を確保する。
結論
今回の資本提携は「撤退」ではなく、資本とオペレーションの再配置である。成長を続ける市場における需要の多様化に対し、軽資産化と本土化(現地化)によって反応速度を高め、ブランド資産の価値を維持しながら資本効率を引き上げる試みだと言える。
日本企業にとっても、中国市場での持続的成長とリスク管理を両立させるためには、同様の分業設計と長期コミットメントを前提にした戦略設計が不可欠になる。(編集:耕雲)
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