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2025-10-23

空の玄関は“二刀流”が当たり前!? 中国で増える「マルチ空港都市」



空の玄関は“二刀流”が当たり前!? 中国で増える「マルチ空港都市」

中国のマルチ空港都市のイメージ

中国の主要都市では、二つの空港を役割分担で一体運用する「マルチエアポート(双机场)」化が加速している。北京・上海・成都が先行し、南京と広州がこれに続く。一方、経済実力を備えながら民用の運送空港を持たないのが蘇州市だ。空港という“点”の確保よりも、ネットワーク設計にフォーカスが置かれている。

広州白雲空港第3ターミナル、年内運用開始へ

「規模」を誇る中国の空港は常に話題が尽きない。広州白雲国際空港では年内の第3ターミナル(T3)運用開始が迫っており、すでにカウントダウンに入っている。 [1], [2], [3], [4], [5], [6]。T3の意匠は稲穂や木棉花(カポック)をモチーフとした造形で、広州らしさを前面に出す。屋外型の展望デッキ設置も計画されている。

T3開業後は、国際線を中心に航空会社が段階的に移転する見通しだ。アクセス面では、直通の地下鉄が未開業である一方、都市間鉄道など複数の軌道系アクセスの導入・接続強化が計画されている。地下鉄高増駅とT3を結ぶ連絡系統(通称「空港2路支線」)の新設が想定され、開業と同時期の運行開始を目標とする。T1–T2間の無料シャトルは24時間運行しており、T3開業時に3ターミナルを結ぶ連絡手段の詳細が改めて公表される見込みである。

なお、海珠湾トンネルが通車予定で、中心部—広州南駅方面の移動時間の短縮が見込まれる。地下鉄22号線や新白広城際鉄道も順次開通が計画され、空港アクセスの多重化が進む。

広州白雲空港T3ターミナル

広州白雲空港T3ターミナルの建設状況に関する報道

世界最大級の海上空港へ——大連・金州湾国際空港

大連では、中国初の沖合人工島空港となる金州湾国際空港の建設が進む。空港島は約20平方キロメートルの埋立地で、関西国際空港のおよそ4倍規模 [7], [8]。空港と陸地を結ぶ海上高速通路(3本)の整備により、都心部までのアクセス時間は約20分を見込む。

本件は国家の重点プロジェクトで、総投資は約509億元 [7]。第1期ではターミナル約50万㎡、平行滑走路2本などを整備し、年間旅客4,300万人・貨物55万トン・発着33万回規模に対応する計画である。第1期の運用開始目標は2035年とされる [8], [9], [10]。ターミナルは「渤海の波」「飛ぶ鳥の翼」を想起させる流線型デザインで、地下1階・地上5階、高さ約47m。6本のコンコースによりターミナルに近い駐機率を高め、平均歩行時間を8分以内に抑えることを目標にする。地下鉄・バス・タクシーを統合する交通センターも併設されるという。

北京:二大空港で2030年に旅客1.6億人へ

北京市は、首都国際空港と大興国際空港の二大空港で2030年に年間合計1億6000万人の旅客取り扱いを目指すと公表した [11]。2024年の実績は約1億1,700万人 [12], [13]。現在、両空港は国内主要都市に加え、64か国・地域と120以上の国際路線で結ばれている。北京市は、首都空港の運用効率化工事や大興空港のサテライト拡張を進め、国際ハブ機能の増強を図る。

各地で進む「ダブルハブ」——上海・成都・南京・広州

このところ目に触れる機会が増えたのが、「双机场(マルチエアポート)」という言葉だ。同一都市圏で複数空港を用途別に分担・一体運用する仕組みである。制度上、滑走路等級4E/4Fを必須とする規定はないが、すでにマルチエアポート体制を整えた上海・北京・成都では、いずれも高規格滑走路が採用されている。発着容量の拡大、貨物流通の効率化、ピーク分散など都市機能の高度化をねらう。

空港等級(ICAO参照コード)

項目 / 等級4E4F
構成4 + E4 + F
滑走路コード番号(長さ)4=滑走路長 1,800 m以上4=滑走路長 1,800 m以上
コードレター(機体寸法)E=翼幅 52 m以上 65 m未満、主脚外側間隔 9~14 mF=翼幅 65 m以上 80 m未満、主脚外側間隔 14~16 m
代表機材例B777、B787、A330、B764 などA380、B747-8 など
典型的な運用規模大型機の国際線に対応超大型機対応(誘導路・エプロン間隔等の要件がより厳格)

※ 参照コードは「番号(1~4)+レター(A~F)」で表す。番号は滑走路長、レターは主に翼幅と主脚外側間隔に基づく区分である。


情報ソース:
  1. SKYbrary — Aerodrome Reference Code: https://skybrary.aero/articles/aerodrome-reference-code
  2. Transport Canada, TP312 5th — Aerodrome Standards & Recommended Practices(第1章・参照コードの表): https://tc.canada.ca/.../tp312-5th
  3. Wikipedia — Aerodrome reference code(概説とコード表): https://en.wikipedia.org/wiki/Aerodrome_reference_code
  • 上海:浦東(国際・貨物の主力)と虹橋(国内・ビジネス需要)で明確な機能分担。さらに南通新空港が「上海第3空港」として共同整備に進んでおり、2025年8月に上海空港集団51%・南通城建49%の合弁会社が設立した。
  • 北京:首都+大興の二大空港体制で国際・国内の両面を強化。
  • 成都:双流(既存)と天府(新空港)の併用で国際ハブ機能を拡大。
  • 南京「一主一補五通用」の枠組みを提示。主=禄口、補=馬鞍(計画・整備段階)、通用空港=溧水など5か所で、将来的な複線運用を視野に入れる。
  • 広州圏:白雲空港に加え、「珠三角枢纽(広州新)空港」(第1期は2027年完成目標、運用開始時期は別途公表)の整備が進み、マルチエアポートの広域連携を志向する。

地方にも広がる二空港運用——江西省贛州

地方都市にも二空港運用の事例が生まれている。江西省では2025年9月28日に赣州瑞金空港が正式開港し、北京(大興)および上海(浦東)との直行便が開港当日に運航された [14], [15], [16], [17], [18]。これにより既存の赣州黄金空港と合わせ、贛州市は二つの民用空港を持つ都市となった。贛州市瑞金市(県級市)は「共和国のゆりかご」と呼ばれる革命の聖地。自然景観では、羅漢岩が丹霞地形(たんかちけい)の名所として知られる。

瑞金空港の開設

贛州瑞金空港の開港を伝える報道

重慶:第二空港が計画段階、江北も処理能力を増強

重慶市では、第二空港(璧山空港)の建設計画が前期作業段階に入り、リザーブ事業として推進されている。目標として2030年の完成が掲げられ、年間旅客数7,000万人・貨物350万トン規模を計画する [19], [20]。役割分担では、江北国際空港=旅客中心、璧山空港=貨物・産業支援が想定されている。

既存の江北国際空港では処理能力の増強が進む。第4滑走路は2024年末に運用開始、T3Bターミナルは2025年春に供用開始のスケジュールで拡張が進められ、発着処理能力の増強と国際ネットワークの拡充が見込まれる [19], [20]。都市構造は西部へと重心が移り、西永・璧山・永川・江津が新たな産業・交通の軸として位置づけられている。RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)や中国—ASEAN自由貿易の進展も追い風となり、重慶は内陸型の空中経済モデルを志向する。

「空港を持たない」主要都市・蘇州の現状

こうした中で、全国屈指の経済規模を誇りながら、空港という“点”を市域に持たない蘇州の特殊性に注目が集まる。同市は現在、近隣の無錫・蘇南碩放国際空港(WUX)を共同で活用し、旅客・貨物の利便性を高めるため都市ターミナル(航站楼)や前置貨物駅の整備、高速鉄道(高鉄)・地下鉄接続の強化を進める。一方で、市内では通用空港(小型航空機向け)の整備計画が段階的に進み、市域全体をカバーする低空交通網(最大11拠点想定)の構築といった将来像が描かれている。ただし、本格的な空港建設については、いまだ“夢の途中”にあるといえそうだ。(編集:耕雲)

空港のイメージ

参考文献

  1. [1] 広州白雲空港T3ターミナル、年内開業へ。「航空+高鉄+都市鉄道」を結ぶ超交通ハブが誕生. (2025年10月17日). 友和生活. https://yuwa-life.com/news/20251017003
  2. [2] 広州・白雲空港T3ターミナル 年末に稼働. (2025年10月1日). 中国経済新聞. https://chinanews.jp/archives/28360
  3. [3] 広州白雲国際空港のT3ターミナルの建設は完了し. (不明). moomoo. https://www.moomoo.com/ja/news/post/39600989
  4. [4] Guangzhou Baiyun Terminal 3 Set to Redefine Global Aviation. (2025年7月13日). TBO Academy. https://www.tboacademy.com/blog/guangzhou-baiyun-terminal-3-set-to-redefine-global-aviation/
  5. [5] Guangzhou Baiyun International Airport in China is set to. (不明). Instagram. https://www.instagram.com/p/DL5azh5qOOe/
  6. [6] Construction of T3 Terminal of Guangzhou Baiyun. (不明). Facebook. https://www.facebook.com/PeoplesDaily/posts/construction-of-t3-terminal-of-guangzhou-baiyun-international-airport-nears-comp/1303060105198611/
  7. [7] 大連金州湾国際空港のターミナルビルが建設開始(中国). (2024年10月23日). JETRO. https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/10/a5985b7eef1f4f79.html
  8. [8] 中国、人工島に浮かぶ世界最大の海上空港を建設中. (2024年12月20日). CNN.co.jp. https://www.cnn.co.jp/travel/35227535.html
  9. [9] 関空を超える世界最大の海上空港の大連金州湾国際空港が. (2024年12月23日). Sky-Budget. https://sky-budget.com/2024/12/23/dalian-new-airport-news/
  10. [10] 金州湾(Dalian Jinzhou Bay)に世界最大規模の海上空港が. (2025年1月14日). MK News. https://www.mk.co.kr/jp/culture/11217163
  11. [11] 北京の航空旅客数、30年に1.6億人へ. (2025年10月16日). NNA ASIA. https://www.nna.jp/news/2850245
  12. [12] 北京市の国際ハブ空港2カ所の旅客数、5年ぶりに1億人超す. (2025年1月26日). 新華網日本語. https://jp.news.cn/20250126/f940ec160e974d3cb5afc2d6b88f86b8/c.html
  13. [13] Major Chinese cities institute dual airports to improve. (2025年2月26日). People's Daily Online. http://en.people.cn/n3/2025/0226/c90000-20281617.html
  14. [14] 赣州瑞金机场開港. (2025年10月8日). 友和生活. https://yuwa-life.com/zh/blog/25108
  15. [15] 赣州瑞金机场今日通航. (2025年10月10日). 中国民用航空华东地区管理局. http://hd.caac.gov.cn/HD_DQYW/202510/t20251010_228772.html
  16. [16] 江西综合交通网里程超二十二万公里. (2025年10月13日). 中華人民共和国交通運輸部. https://www.mot.gov.cn/jiaotongyaowen/202510/t20251013_4178094.html
  17. [17] 贛州瑞金空港が開港 江西省 (4). (2025年9月29日). 人民網日本語版. http://j.people.com.cn/n3/2025/0929/c94638-20372842-4.html
  18. [18] “共和国摇篮”江西赣州瑞金机场正式通航. (2025年9月29日). 中国新聞網. https://www.jx.chinanews.com.cn/news/2025/0929/119667.html
  19. [19] 重慶第二空港、建設へ向けた準備が着々と進行中. (2025年10月18日). 中国経済新聞. https://chinanews.jp/archives/28362
  20. [20] 重慶、第二空港建設へ向け準備着々. (2025年10月18日). NNA ASIA. https://www.nna.jp/news/2850250




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