“寿司テロ”を彷彿?“ゆすり”対策でハイディーラオが奮戦、プライバシー保護でジレンマも
大手火鍋チェーン「海底撈(ハイディーラオ)」の北京にある店舗で、4人組の男性客による“ゆすり”事件が発生し、犯人らが摘発されていたことが明らかになった。男らは、ガラスの破片を故意に食品に混入させ、その被害に遭ったと装い、店舗から弁償金をだまし取ったが、事後調査で悪徳な詐欺であることが判明し、逮捕された。
中国版“ボトルマン”?
中国語に「碰瓷(pèng cí、ポンツー)」という言葉がある。これは「ゆすり」や恐喝行為を象徴する言葉として使われる。故意に事故やトラブルを引き起こして相手から不当に金銭を巻き上げる詐欺行為を指す。
「碰瓷」には、車やバイクにわざと接触し、被害を大げさに演じて治療費や慰謝料を要求する「当たり屋」の手口や、飲食店で料理に異物を混入させるなどして「健康被害を受けた」と言いがかりをつけるものがある。偽物のワインボトルをわざと人にぶつけて割り、弁償を要求する「ボトルマン(bottle-man)」の行為も同じ部類だといえる。
海底撈がゆすり被害に
そんな「碰瓷(pèng cí)」の被害に遭遇したのが有名火鍋チェーンの「海底撈(ハイディーラオ)」だ。今年(2024年)の3月、北京の店舗で男性4人グループの客がゴマダレにガラスの破片があったと店舗に言いがかりをつけ、食事代378元を無料にさせただけでなく、2,500元を賠償させた。しかし、その後、警察による調査等を経て、ガラス片は男らが故意に混入したものであることが発覚する。男らによって海底撈が受けた詐欺被害は、北京、承德の5店舗に及んでいたことも分かった。
男らは事前にガラス片を隠し持ち、食事中にわざとらしく被害を装い店員を騙した。こうした“ゆすり”行為で店から巻き上げた金額は総額1万元を超えたたという。現在、男らはゆすり・恐喝(敲詐勒索、qiāo zhà lè suǒ)罪で刑事拘留されている。なお、中国メディアの報道によると、海底撈は2021年6月にも深センで類似した詐欺事件に直面したことがあるとされる。
“寿司テロ”&“ミンボー”との比較
有名火鍋チェーンを狙った「ゆすり」事件の報道に接し、昨年日本で社会問題となった"寿司テロ"を想起した人もいるかもしれない。2023年1月、回転寿司チェーンのスシロー店舗で未成年が湯呑みや寿司に唾液を付着させ、業界全体のイメージダウンやスシローの株価に影響を与えた事件のことだ。ただし、この事件で焦点となったのは常軌を逸した迷惑行為であり、ハイディーラオのケースとは異なる。
むしろ32年前の日本映画『ミンボーの女』(伊丹十三監督)で描かれた問題のほうが共通点が見つけられるかも知れない。名門ホテルのレストランでヤクザが料理にゴキブリを混入させて賠償金を巻き上げるシーンが描かれている。もちろん暴力団などの組織が関与した「民事介入暴力(ミンボー)」と同列に論じるのも牽強な話しだが、伊丹監督が作品で描いた社会悪への洞察は印象深い。昨年は伊丹監督の生誕90周年。「上海国際映画祭」や「香港国際映画祭」でも数々の作品が上映されており、影響力の強さが伺える。
監視カメラ設置のジレンマ
本題に戻ると、海底撈の事件で警察側が事実関係をつかみ、犯行を摘発するうえで決め手となったのは店内の監視カメラが収めた証拠映像だとされる。そのため、消費者のクレームに適切に対応できるように従業員にトレーニングを施すことはもとより、テクノロジーを駆使したセキュリティー確保が被害防止のうえで意味を持つことになる。
しかし、監視カメラの過度な設置は、消費者のプライバシーを脅かしかねない問題だ。海底撈が店内に設置した監視カメラについては、これまでにもネットで取りざたされてきた経緯がある。企業と消費者双方が利益を守れるようにバランスをいかに取るべきか、今後も活発な議論が繰り広げられることが予想される。(編集:耕雲)
店内への監視カメラ設置をめぐる議論はいまも続く
参考