エムポックス変異の脅威でWHOが緊急事態宣言、欧州でも感染確認
世界保健機関(WHO)は2024年8月14日、エムポックスの感染拡大が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)に該当すると宣言。新たなクレード1bの出現が深刻な懸念材料となっており、日本、中国はそれぞれ感染防止に向けて警戒を強めている。
「緊急事態宣言」で警戒強化
世界保健機関(WHO)の緊急委員会が8月14日に開催され、エムポックス(mpox、旧称「サル痘(monkeypox)」)の感染拡大が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC=Public Health Emergency of International Concern)に該当すると宣言された。この宣言は、WHOの独立した専門家から成るIHR緊急委員会(International Health Regulations Emergency Committee)の助言を受けて行われた。
感染は中央アフリカおよび東アフリカの一部に拡大しており、新たな亜種である「クレード1b(Clade 1)」が検出されていることが深刻な懸念材料となっている。
WHOの報告によれば、2024年に入ってから既に昨年を超える1万5,600件以上の感染例と537人の死亡が報告されている。このPHEICの宣言を受け、日本の外務省はコンゴ民主共和国を含む7か国(コンゴ民主共和国、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダ、コンゴ共和国、中央アフリカ共和国)に対して感染症危険情報(レベル1)を発出し、該当国への渡航者及び滞在者に対し、感染防止に十分な注意を払うよう求めている。
北欧でも「1b」確認
エムポックスウイルスには、大きく分けてクレード1(コンゴ盆地系統群)とクレード2(西アフリカ系統群)の2種類があり、今回特に懸念されているのは、重篤な症状を引き起こし致死性が高いクレード1の亜種「クレード1b」である。過去のクレード1によるアウトブレイクでは、致死率が最大10%に達したことが報告されている(BBC報道)。
スウェーデンの公共衛生当局は15日、国内で初めて「クレード1」の感染例を確認したと発表した。感染者は流行地域に渡航した際に感染したとされ、現在はストックホルムで治療を受けている。国内の広範囲にリスクが及んでいるわけではないと説明されたが、クレード1が欧州に伝播したことの衝撃は大きく、今後の動向が注視されている。
中国が水際措置強化
中国ではエムポックスに対する警戒が強化されており、中国税関総署は15日、エムポックス感染地域からの渡航者や物品に対する水際対策を実施すると発表した(🔗)。感染地域からの渡航者については、感染者との接触歴や発熱、頭痛、背痛などの症状がある場合、入国時に自主申告を義務付けた。税関は必要な医療措置を講じ、サンプル検査を行う。
また、汚染の可能性がある車両やコンテナ、貨物には衛生処理を行うことも求められており、これによりエムポックス感染の防止を図っている。これらの措置は今後6か月間有効であり、WHOが新たに指定する感染地域についても同様の措置が適用される。
エムポックスの予防措置は?
エムポックスは急性発疹性疾患であり、潜伏期間は5~21日で、通常は6~13日で症状が現れる。症状には、寒気、発熱、頭痛、倦怠感、背痛、筋肉痛、リンパ節の腫れが含まれる。発疹は顔や四肢に現れ、約1週間後には膿疱が形成され、その後結痂ができる。
予防策として、旅行者は目的地のエムポックス感染情報に注意し、動物との接触を避けることが推奨されている。また、エムポックス患者との密接な接触や野生動物の食用や処理を避けることも重要である。天然痘ワクチンがエムポックスウイルスに対して一定の交差防御効果があることも指摘されている。
なお、日本国内では2023年5月26日に、それまでの「サル痘(monkeypox)」から感染症法上の名称がエムポックスに変更されたが、中国語では依然として「猴痘(hóu dòu)」の呼称が使用されている。(編集:耕雲)
参考
WHO Director-General declares mpox outbreak a public health emergency of international concern
海外安全ホームページ: 広域情報 (mofa.go.jp)
WHO、エムポックスで「公衆衛生上の緊急事態」を宣言 - BBCニュース