若者は山西を目指す!『黒神話:悟空』ブレイクで“聖地巡礼”、高まる高速鉄道網への期待
中国古典小説の「四大奇書」の一つ『西遊記』を題材としたアクションRPG『黒神話:悟空』の大ブレークを受けて、山西省の観光市場が活況を呈している。ただ、同省の観光資源は広く全域に分散しており、高速鉄道網が不十分なことが観光誘致のうえでハードルになっているという。
「黒神話・悟空」が大ヒット!
中国国産ロールプレイングゲーム『黒神話・悟空(BlackMyth)』が世界で大ヒットを続けており、8月の発売からわずか1か月を満たずして1,890万本の売上を記録していたことが明らかになった。2025年初頭には新たなDLC(ダウンロードコンテンツ)のリリースが予定されており、新規キャラクターの追加も期待されている。
同ゲームでは、多彩な古建築、彫刻、壁画といった中国文化の要素を包含していることを特徴とし、ゲーム中の撮影地36か所中27か所が山西省に位置していることから、同省がプレイヤーたちの“聖地巡礼”地として浮上してきた。観光費用が比較的低く抑えられ、コストパーフォーマンスが高い旅行が楽しめると見られていることも山西観光ブームの追い風になっているとする見方もある。
山西省各地が“聖地巡礼”地に?
現在、山西省を訪れる観光客の約半数が「90後」(1990年以降の生まれ)や「00後」(2000年以降の生まれ)の世代で占められていることからも、『黒神話:悟空』が観光市場に大きな影響を与えていることは明らかだ。中秋節の連休で大同は国内の「十大人気急上昇観光地」に選ばれ、このほか朔州(さくしゅう)の崇福寺(そうふくじ)や応県木塔(おうけんもくとう)も人気が急上昇している。
省都である太原市への注目度も高い。晋祠(しんし)、天龍山、山西博物院、太原動物園などの観光スポットが中秋節の国内人気観光地トップ10に入っている。山西省は文化的魅力と歴史的価値を包含する土地として国内外に存在感を示している。
早くもオーバーツーリズム!?
山西文化旅游局と生活プラットフォームの美団(メイトゥアン)が共同で展開する観光プロモーションも好調のようだ。「美好在晋(「晋」は山西省の別称)」と名付けられた同プロモでは、省内29か所の観光地が「マストリスト」に選出され、観光客は「山西撮影地テーママップ」を使用して現地を訪れる前に観光地を擬似探索することができる。
山西観光ブームは高まるばかりであり、早くもオーバーツーリズムの弊害が現れているきらいもある。大同の雲崗石窟をはじめ、来場者数が最大収容人数に迫り、混雑のために交通機関や駐車場等を圧迫を受けているとされる。
また、山西省では、これまで午後2時から4時の間に店を閉めるレストランが多く、この間は昼寝を習慣にしていた従業員も多かったという。しかし、観光客対応に追われていれば、もはやそんな余裕はない。『黒神話・悟空』のブームは、山西省の人たちのライフスタイルまで変えてしまったといえそうだ。
高速鉄道網の構築で出遅れ
太原市は、バンコク(タイ)、ニャチャン(ベトナム)、シドニー(オーストラリア)との既存国際路線に加え、昨今ではチョンジュ(韓国)やモスクワ(ロシア)との路線も開設している。9月3日からは4年ぶりに太原‐名古屋線(※)も再開した。海外の各都市との連携が充実することで、インバウンド促進にも期待が高まる。
こうした中、省内交通のアキレス腱として指摘されているのが高速鉄道だ。省内に敷設された高速鉄道の総延長は1,162キロで、“2000キロクラブ”入りを果たした近隣省の安徽、湖南、河南、江西に水を開けられている。太原観光が全省に占める割合は2割に過ぎず、観光地が省全体に広く分散しているのに関わらず、鉄道ネットワークに乏しいことがアキレス腱になっているのだ。
ネットには新たな高速鉄道の建設を望む声は根強いが、一方で巨額の建設費と維持費を背景に、軌道交通のみならず高速鉄道建設に慎重な姿勢を示す地方政府が増えているのが昨今の趨勢と言われている。今後の建設計画の最適化と経済的バランスがどのように図られていくかに注目が集まる。(編集:耕雲)
参考
'Black Myth: Wukong' gives boost to Chinese culture on global stage - CGTN
山西・太原-日本・名古屋の国際旅客便路線 4年間停止後に運航を再開--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)