動詞化した“Shanghai”は『City不City』?スラングが映し出す中国主要都市の実態
今夏、「City不City」という斬新なネットスラングが注目を集めた。一方、中国では都市名を用いたスラングも多く存在する。都市文化やライフスタイルを反映した象徴的な表現であり、現代中国を理解するうえでも一助になるはずだ。
「City不City」の語法は正しいのか?
「City不City」は、外国人ブロガーが投稿した動画をきっかけに中国で広く知られるようになったネットスラングである。「City」(都市)と中国語の「不(bù)」(否定)を組み合わせ、「イケてる?」「おしゃれじゃない?」という意味で使われている。
一般に「不(bù)」は動詞や助動詞、形容詞の前に置かれるため、「City不City」は構文的に正しいとは言えそうにないが、日本語でも「エモい」や(いまでは死語となってしまったが)「ナウい」といった奇妙な用法は珍しくない。「City不City」もリズムの良さや言語の創造性を示した例として受け止めればよいのだろう。
「Shanghai」が持つ意外な意味
実は、具体的な都市名が名詞以外の品詞の意味を持つことがある。オックスフォードやウェブスターなどのオンライン辞書で「Shanghai」と検索してみると、「船員をだまして強制的に船に乗せる」という意味が含まれていることが分かる。
これは19世紀に派生したスラングで、現在ではほとんど使われていないが、当時の海運業における詐欺的手口に由来する。また、遼寧省大連市では「去上海」が「海に行く」という意味を持つが、他の地域から来た人々が戸惑うことも多い。
出所:Merriam-Websterオンライン辞書
都市名を使ったネットスラング
「Shanghai」の例は特殊だが、都市名が比喩的に使われるケースは珍しくない。日本語でも「京都風」「東京っぽい」「名古屋流」等はふだんから耳にすることが多い表現だ。では、中国の各都市の特性や、そこに住む人たちの生活スタイルをあらわす表現にはどんなものがあるだろうか。以下に代表的なものを紹介する。
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1. 北漂 (běi piāo)
用例: 「他已经北漂了五年,还没有买房子。」(彼は北京で5年間暮らしているが、まだ家を買っていない。) 2. 深圳化 (shēn zhèn huà) 意味:「深圳化」という表現は、特定の地域や都市が急速に発展し、現代化されていく過程を指す。深圳は経済特区として急速に発展したため、この都市名は近代化や経済成長の象徴として使われることがある。 用例: 「这个城市正在经历快速的深圳化。」(この都市は急速に深圳化の過程を経験している。) 3. 成都式 (chéng dū shì)
用例: 「成都式的生活节奏慢,适合养生。」(成都のようなゆっくりとした生活リズムは、健康的な生活に適している。) 4.广州“挤”(guǎng zhōu jǐ) 意味: 「广州“挤”」は、広州(广州)の都市名と動詞「挤」(押し合う、混雑する)を組み合わせた表現で、広州の人口密度の高さや公共交通機関、特に通勤時の混雑を象徴している。 用例:「每天上班都要经历广州‘挤’,人太多了!」(毎日通勤時に広州の混雑を経験していて、すごく人が多い!) 5. 海南躺 (hǎi nán tǎng) 意味: 「海南躺」は、「海南(省)でゆったりと横たわる」という意味で、海南のリゾート地や南国的な雰囲気を象徴し、リラックスしてのんびり過ごすことを指す。なお、「躺平(tǎng píng)」といえばおなじみの流行語であり、“寝そべり主義”を示す。 用例: 「退休后我想去海南躺,每天晒晒太阳。」(退職後、海南でのんびりと過ごし、毎日太陽を浴びたい。) |
カオスの中で叫ぶ「City不City」?
「重庆火锅(chóng qìng huǒ guō)」といえば、辛さや刺激を象徴する。さらに、ウォン・カーウァイ監督の映画『恋する惑星』の原題は『重庆森林』(英語タイトル:『Chunking Express』)だ。「重慶マンション(チョンキンマンション)」とは、混沌としたテーマや雰囲気を表現するためのメタファーだとされる。
あるいは都市のコンクリートジャングルで人々が心の安らぎを求める様子や、都市が抱える光と影を表すものだといってよいだろう。コロナ禍で一時期流行した「逃离北上广(táo lí běi shàng guǎng、北京・上海・広州から逃れて地方都市に移住すること)」を果たしたとしても、人口大国・中国には多くの大都市が広がり続ける。都市の在り方やその価値を問い続ける象徴的なフレーズとして『City不City』は今後も語り続けられていくのかも知れない。(編集:耕雲)