刺傷事件、バス事故が連発、「邦人援護件数」から考える海外安全リスク
海外渡航・生活のリスクを再認識させる事件・事故が相次いでいる。中国では浙江省寧波市に続き北京市でも刺傷事件が発生した。トルコやマレーシアで起きた観光バス事故では邦人も犠牲になり、「交通機関事故」の脅威が改めて浮き彫りになっている。
寧波に続いて北京でも刺傷事件
10月28日午後、北京市海淀区の小学校付近で刃物を持った男が通行人を襲撃し、5人が負傷したが、日本人の被害は確認されていない。容疑者は既に拘束され、詳細は捜査中である。現場の海淀区は教育機関やハイテク企業が集まる治安の良好な地域とされ、今回の事件は地域住民にも衝撃を与えた。
一方、一週間前の22日には浙江省寧波市(海曙区横街鎮)でも50歳の男性が刃物を使って襲撃し、中国人2名が負傷、救急車で病院に搬送される事件が発生している。被害者は通学途中の女児とその母親だった。在中国各公館は在留邦人に向け、外出する際は複数人で行動する等、安全確保を呼びかけている。
「交通機関事故」の脅威
外務省が今年6月に発表した『令和6年版外交青書(外交青書2024)』では、「世界各地で日本人が犯罪、交通事故、登山中の事故などに巻き込まれる事例が引き続き発生している」ことが指摘、交通事故が邦人の安全を脅かすリスクとして挙げられている(第4章第2節:海外における日本人への支援)。同省は「海外安全ホームページ」を通じ、日本とは異なる交通環境におけるリスク管理の重要性を強調している。
『援護件数統計』によれば、2022年の「交通機関事故(交通事故、船舶・航空・列車事故含む)」による援護件数は全世界で27件となっており、2013年の143件、2015年の116件と比較して減少している。日本人による道路交通法違反の件数も、2013年の46件、2015年の38件から、2022年には4件と大幅に減少した。むしろ、昨今では日本国内で訪日外国人によるレンタカー事故が増加していることが問題視されている。
トルコ、マレーシアで観光バス事故
トルコで10月17日に、マレーシアで24日にそれぞれ観光バス事故が発生し、日本人観光客が犠牲になったことが大きく報道された。トルコの事故では、大型バスが横転し、日本人観光客の男性1人が死亡。マレーシアの事故では西部ペラ州の高速道路で日本人観光客らを乗せたバスとトラックが衝突し、73歳女性が亡くなり、他の日本人乗客10人も負傷した。
事故発生後の一連の報道では確かな事故原因が明かされることはなかったが、安全不確認、脇見運転、動静不注視、漫然運転など、運転者の安全意識不足が背景にあるとする可能性が指摘されている。3月中旬にはインドネシアのジャワ島中部で、現地人運転手の居眠りにより、日本人が死亡する交通事故が発生していた。
風化させたくない大事故の記憶
道路交通のみならず鉄道、海上、航空交通でも邦人が犠牲となった事例は少なくない。2013年のエジプト・ルクソール熱気球墜落事故(19名の死者のうち4名が日本人観光客)や、2002年の中国北方航空放火墜落事件(日本人3名が犠牲)、さらには1988年の上海列車事故(修学旅行の高校生29名が死亡)などは代表的なものだ。
海上交通の事故については日本国外の事例ではないが、2022年4月23日、観光船「KAZU I(カズワン)」が北海道知床半島沖で沈没した事故は記憶に新しい。セウォル号沈没事故(2014年4月16日)8周年の日から間もないタイミングであり、乗客26名全員が死亡する惨事となったのは衝撃的だった。
これらの事故は、日常的な生活の中に存在するリスクと安全対策の徹底を再確認する機会を私たちに提供している。ちなみに本日10月29日は死者149人を出したソウル梨泰院(イテウォン)雑踏事故の日に当たる。この事故でも10代と20代の2人の日本人女性が犠牲になった。安全リスクは常に身近に存在している。(編集:耕雲)
参考
外務省 海外安全ホームページ|【安全対策情報】北京市の小学校付近における刺傷事件(注意喚起) 外務省 海外安全ホームページ|【安全対策情報】浙江省寧波市における刺傷事件(注意喚起) 蘇州で邦人母子含む3人が襲撃され負傷、「援護件数」から中国で暮らす安全度を再考 上海松江の襲撃事件はどう影響?最新ランキングに見るグローバル都市の安全度 外務省 海外安全ホームページ|交通事故に関する注意喚起 マレーシアで観光バスが事故、日本人1人死亡 73歳女性 - 日本経済新聞 1人死亡「深くおわび」 トルコのバス横転事故 旅行会社(時事通信) - Yahoo!ニュース 外務省 海外安全ホームページ|交通事故に関する注意喚起:インドネシア