“閉店ドミノ”で揺れる外資ブランドの神通力、逆境突破で光る日系チェーンとは?
「閉店ドミノ」は2024年の中国消費市場を象徴する現象となった。競争激化と消費者ニーズの変化が影響し、贅沢市場の縮小や外資系ブランドの減退が顕著となっている。それでも神通力を失うことなく成長を続けるブランドは存在しており、様々な示唆を与えてくれる。
閉店ドミノと職業閉店人
2024年、中国では多くの業態で暖簾を下ろす店舗が相次ぎ、「閉店ドミノ」や「閉店潮(bì diàn cháo)」という言葉が注目を集めた。「閉店潮」とは閉店が相次ぐ現象を指す中国語の表現だ。背景には競争の激化、消費者ニーズの変化、経営コストの増加、賃料交渉の難航といった複数の要因が絡んでいる。たとえば北京、天津、青島、西安、厦門などの店舗を大量閉鎖した鼎泰豊(dǐng tài fēng)や、ルイ・ヴィトンを含む高級ブランド店の閉鎖や出店計画の延期は、贅沢品市場の縮小を象徴する現象として指摘されている。
また、「Will's(威爾士)」等のフィットネスクラブや教育施設の閉鎖では、利用者が前払いした料金の返金が困難になる問題が浮き彫りとなった。この流れの中で、閉店計画の実行を請け負う「職業閉店人」と呼ばれる代行業者の存在も批判の対象となっている。
🔗中国で“閉店ラッシュ”が加速、暗躍する「職業閉店人」とは?

舶来信仰からの脱却
中国市場では、日本企業を含む外資系ブランドが競争に苦しむ状況が広がる。ロレアルや資生堂、P&Gといった化粧品ブランドの売上が減少し、ヤクルトの上海工場閉鎖のニュースは多くの消費者に衝撃を与えた。こうした背景には、消費者の価値観の変化も大きく関わっている。
中国では、消費者の外資系ブランドへの過度な信頼や依存からの脱却が進んでいる。高級品よりも手頃な価格の商品を選ぶ「消費のダウングレード」が顕著となる一方で、中国国内ブランドを支持する動き(国潮:guó cháo)が広がりを見せている。さらに、自己顕示的な消費から、より実用的で健康志向の選択肢への消費シフトが進んでおり、これら新しい価値観が消費市場の動向に大きな影響を与えている。
日系小売で閉店連鎖
消費トレンドの変化が激化する中、2024年は日系小売企業における閉店、撤退が相次いだ。上海の梅龍鎮伊勢丹百貨店は27年間の歴史に幕を閉じ、ダイソーは上海で2店舗を閉店した。さらに、四川省成都市にあるイトーヨーカドーの「伊藤広場店」も閉鎖が決定している。
ただし、イトーヨーカドーは2028年に成都市南部の麓湖地区で新たな総合百貨店を開設する計画だと伝えられており、消費者ニーズの変化や競争環境の厳しさが浮き彫りとなる中、今後の戦略展開に注目が集まっている。
逆境でも気を吐くブランド
全体として厳しい状況が続く中でも、むしろ逆境に順応し成長を続ける外資企業も存在する。ウォルマート傘下のサムズクラブ(Sam's Club)は11月23日時点で店舗数が53店舗に達し、会員数は500万人を突破。さらに、総売上のうちオンライン販売が5割を占めるなど、デジタル化への対応力が強みとなっている。
一方、会員制倉庫型スーパーのコストコは現在中国で7店舗を運営。効率的な店舗運営や商品ラインアップにおける差別化に成功しており、その独自の価値提供が消費者に歓迎された。変化の激しい市場環境の中で柔軟に対応する企業の典型例として注目に値しよう。
サイゼリヤの多店舗展開に注目
日系企業で快進撃を続けるのは、イタリアンレストランチェーンの「サイゼリヤ」である。ジェトロ広州による公開レポート(海外ビジネス情報>地域・分析レポート)よれば、サイゼリヤは中国を中心とする「アジア」セグメントの売上高が日本円で前期比30.1%増の581億円に達したと発表、中国国内の店舗数は10月末時点で450店舗以上を数える。
一方、レポートでは、サイゼリヤが口コミを活用した認知度向上を図っていることや、直営店運営にこだわることで品質維持を徹底し、競争力を確保している現状があぶり出されている。厳格なコスト管理も成功の要因として挙げられ、成長を続ける同社の戦略は多くの日系企業に示唆を提供している。(編集:耕雲)
中国消費市場をめぐる最近の話題から
01
サムズクラブの苦悩――転売屋
広州のサムズクラブ会員店で、転売目的の代理購入者がトイレの個室内でケーキを分ける作業が行われていたことがSNSで話題になっている。ネットで共有された画像には、トイレの個室の床にケーキとナイフが置かれている様子が確認された。
サムズクラブ側は、これは店員による行為でないと説明している。不適切な場所での食品の分装は、衛生面や安全面で重大なリスクを伴う。消費者は信頼できる購入経路の利用が必要で、店舗側と消費者が協力して食品の安全を確保する取り組みが求められている。
02
値上げと値下げが共存する飲食チェーン業界
ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の主要メニューが12月24日、平均2%値上げとなった。営業コストを含むさまさまな要因が絡んでいるとされ、KFC以外にも価格調整に踏み切るブランドが複数ある。サイゼリヤも一部商品の小幅な値上げを行っている。
一方、中国でイタリアン料理を身近なものにしたサイゼリヤのインパクトは大きく、その攻勢に押され、ピザハットは大幅な値下げを実施している。中国の外食チェーンは価格の引き上げと引き下げが入り乱れる様相を示している。
03
若者が選ぶ「理性的消費」
中国の若年層を中心に、「平替(píng tì)」(手ごろな価格の代替品)の選択が広がりつつある。これを「消費のダウングレード」と捉えるのではなく、「理性的消費」として評価する見解も増えてきた。価格比較アプリや大規模セールの普及により、実用性やコストパフォーマンスを重視した消費意識が高まっている。
なお、海外ブランドへの憧れが薄れる現象は「消費祛魅(qū mèi)」(消費のディスエンチャントメント:ドイツの社会学者であるマックス・ウェーバーが提唱した概念。“脱魔術化(Entzauberung)”)と呼ばれ、昨今の中国の消費市場を読み解くキーワードとなっている。
参考
行列のできるサイゼリヤ(中国) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
m360传赢 - Sam's Club 山姆:中国会员制零售的本土化创新与实践