ファーウェイPC、Windows供給停止で独自OS本格移行へ
中国では独自のITエコシステムが成長を続ける。Windows OSの供給停止を目前に控えるファーウェイは、自社開発OS「HarmonyOS」でマイクロソフトの牙城切り崩しに挑む。「WPS Office」も攻勢を見せている。
海外ITサービスの相次ぐ撤退
中国のIT市場では、海外のプレイヤーの進出と撤退が繰り返されてきた。2006年末にはeBayが撤退し、2010年にはGoogleが検閲問題を理由に本土向け検索サービスを香港へ移転。2019年にはAmazonが中国向けマーケットプレイス事業を終了し、2023年には電子書籍配信「Kindleストア」も閉鎖した。
一方で、中国発のITサービスが成長を続けている。「Temu」や「SHEIN」といったECプラットフォーム、ショート動画アプリ「TikTok」は海外市場での影響力を拡大。かつてITサービスをめぐっては、中国の市場規制に関心が寄せられたが、現在は中国発のサービスが海外で規制の対象になるという逆転現象が起きている。
注目されないSkypeの終了予告
こうした流れの中、Skypeのサービスを5月5日に終了し、ユーザーをMicrosoft Teamsへ移行させるとしたマイクロソフトの発表も、ほとんど話題になっていないようだ。中国ではテンセントの「Weixiin(微信、WeChat)」やアリババの「DingTalk(釘釘)」が代替ツールとして定着している。かつて国際通話の“価格破壊”をもたらしたSkypeの影響力はすでに小さく、存在感に乏しかった。
また、アマゾンが中国のECモールやKindle事業から撤退した際は一定の衝撃を与えたが、今回、アプリストアのサービスが8月20日に終了すると予告されてもネットの反応はほとんどない。そもそも、中国ではテンセントやファーウェイ等のアプリストアが主流となっている。Google PlayがAndroid OS向けアプリストアのデフォルトスタンダードという認識は通用しないというのが実状だ。
国産OSとクラウドサービスの拡大
中国のパソコン市場に目を向けると、マイクロソフトの地位でさえ安泰とは言い切れない現状が浮き彫りになってくる。Microsoft Officeの代替ソフト「WPS Office」(キングソフト)は、2023年に国内の1日あたりアクティブデバイス数が1億を突破。さらに、2024年には企業向けクラウド版「WPS 365」がリリースされ、最近ではAIツール「DeepSeek」が導入されるなど攻勢を強めている。
パソコンOSでは依然としてWindowsが85%のシェアを誇り、中国独自OS「Kylin(麒麟)」の影響力は小さい。政府・軍事・国有企業の関係者を除けば、一般消費者にとって国産OSは馴染みの薄い存在だったといえるだろう。しかし、そんな状況もファーウェイの「HarmonyOS」によって大きく変わる可能性が出てきた。
DeepSeek R1を統合したWPS。データ分析やマインドマップ作成機能も
ファーウェイ向けWindows供給停止へ
市場調査会社カウンターポイントリサーチ(Counterpoint Research)のレポートによると、2024年第4四半期の中国スマートフォン市場において、ファーウェイの独自OS「HarmonyOS(鴻蒙OS)」が19%のシェアを獲得し、アップルのiOSのシェア(17%)を上回った。特に、昨年秋にリリースされた「HarmonyOS NEXT」では、Androidアプリとの互換性を排除する方針を打ち出しつつ、シームレスに連携する独自のエコシステムの構築を進めている。
界面新聞などの報道によると、ファーウェイは今後、HarmonyOSを搭載したパソコンのラインナップを展開していく予定だ。その背景には、マイクロソフトがファーウェイ製PC向けに提供してきたWindows OSのライセンスが3月末で期限切れになることがある。ライセンスの延長は行われず、今後はWindowsの代わりに「HarmonyOS NEXT」が使用されていく見通しだ。
ガラパゴス化か?世界展開か?
自社開発のチップと独自技術を搭載した中国純国産製品は、3月20日から21日にかけて開催される「ファーウェイ中国パートナー大会」で正式発表される予定だ。全面統合されたDeepSeekの大規模モデルが搭載され、プロセッサにはKunpeng(鯤鵬)CPUが採用されるという。一方で、Linux OSを搭載したノートPC「MateBook D16 Linux版」の発売も予定されていることが明らかになった。
日本では、かつて「トロンOS」を搭載した組み込みパソコン(BTRON)の普及や、「iモード」の世界展開を果たすことができず、一世を風靡した「一太郎」や「花子」も隅に追いやられてしまった苦い歴史がある。HarmonyOSやWPSといった独自開発の製品が、Googleやマイクロソフトの牙城を崩していくのか、それとも単に中国市場に限定された「ガラパゴス化」の道をたどるのか、今後の市場動向を注視する必要がある。(編集:耕雲)
参考
Huawei HarmonyOS PC may support Windows apps - Huawei Central 华为新款PC发布在即! 华为笔记本或将告别Windows,全部改用鸿蒙PC系统 HarmonyOS surpasses iOS in China as growth continues - Gizchina.com 华为 - 构建万物互联的智能世界 Counterpoint - Technology Market Research & Industry Analysis Firm
