空の上の“火の用心"ーー香港発“尿袋”規制の波紋

発火事故から規制が連鎖
3月20日、モバイルバッテリーの機内発火により、香港航空の旅客が煙に包まれるという事故が発生した。これを受け、香港民間航空局は24日、モバイルバッテリーの機内使用および充電を全面的に禁止するとした通達を発出。施行日は4月7日とされ、キャセイパシフィック航空や香港エクスプレスなども“防火対策令”に従う方針を示した。
この動きはすでにアジア全体に波及しており、シンガポール、タイ、韓国、マレーシアなど、各国の航空会社が相次いで同様の規制を導入している。モバイルバッテリーは便利な道具である一方、過度な安全性への信頼が重大なリスクを招くことを浮き彫りにした。
使用・充電禁止の動き拡大

ネット情報を元に編集部で作成
液体物の規制が欧米で分岐?
火と煙の次はアルコール
かつては大らかな時代だったと思わされるのは、機内で喫煙が可能だった時代もあったことだ。現在は全便禁煙が常識であり、日本では国土交通省が2020年7月から、機内トイレでの加熱式たばこや電子たばこについても使用を禁止すると明文化した。次なる規制対象はアルコールが挙げられる可能性がある。乗客が自分で持ち込んだ酒類を機内で飲むことは禁じられており、原則として許可されるのは客室乗務員が提供する酒のみだ。欧米では泥酔客によるトラブルを防ぐため、機内でのアルコール提供に対する監視体制が強化されているといわれる。

ライターやマッチの許容範囲は?
そのほか見落とされがちな“火種”にライターとマッチがある。国際民間航空機関(ICAO)のガイドラインでは、1人1個までの携帯が認められているものの、ポケットに所持することが前提となる。ただし、火力の強いタイプは機内持ち込みも手荷物預けも全面禁止であり、2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降に取られた措置がいまに続いている。
2025年春、モバイルバッテリーに対する規制は新たな段階へと進むこととなった。火の用心や液体物の取り扱いは、いまや旅支度に欠かせない要素となっている。カメラやパスポートに加え、機内持ち込み禁止リストも、現代の旅人にとって必携アイテムとなりそうだ。(編集:耕雲)
豆知識
「尿袋」って何のこと?
携帯用充電器(モバイルバッテリー)の機内使用および充電を禁止する航空会社が増えているが、こうした動きを伝える報道に接していると、このツールに対する呼称が複数存在することに気づかされる。
中国本土では「充電宝」という名称がおなじみだが、台湾では「行動電源」と呼ぶのが一般的だ。英語の意味を直訳したもので、わかりやすい呼称である。
一方、香港では「尿袋」というユニークな呼称が使われている。形状が医療用の尿収集袋に似ていることに由来するとされる。また、マカオでは「奶媽(ナイマー)」という呼び名があり、これはモバイルバッテリーが電子機器に電力を供給し続ける様子を、乳母(奶媽)の役割になぞらえた比喩表現だという。
参考
外置充電器|民航處公布4.7起飛機上禁用尿袋 不准放於行李架上
EU Aviation Security – Liquids rules update
TSA – 3-1-1 Liquids Rule
ICAO 安全指針(携帯火気類の取扱い)
Singapore Airlines – Portable Battery Policy
香港民間航空局(CAD) – モバイルバッテリー規制発表
Thai Airways – Dangerous Goods
韓国国土交通省 MOLIT – 航空安全通知
Malaysia Airlines – Portable Battery Guidelines
JAL – 手荷物に関する案内
ANA – 危険物持込制限
