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2025-05-07

「奈雪」が“脱日本化”第2弾?──新英語名が波紋、遠のくNAYUKI時代

日本



「奈雪」の新英語名に「Naisnow」

「NAYUKI」から「NAIXUE」を経て「Naisnow」へ——。ブランドの熟成と捉えるべきか、それとも戦略の曲がり角と見るべきか。人気茶系飲料チェーン「奈雪的茶」が米国市場進出を機に英語名称を「Naishow」に変更したとする情報がネットで飛び交い話題になっている。雪の結晶を象った新デザインにも要注目だ。

「脱日本化」のトレンド

「奈雪的茶(ナイシュエ)」は、2015年創業の中国発新式茶系飲料チェーンであり、都市部を中心に強固なブランド認知を得ている。フルーツティーとパンの組み合わせたメニュー等で人気を得て成長、2021年に香港証券取引所での上場を果たしたが、昨年は9億1900万元の損益を計上、市場の競争激化が伺える。

こうした中、同ブランドが5月6日、英語名表記を「Naisnow」へと変更したとする情報がネットで拡散し話題になっている。同ブランドは2022年に創業から使用してきた日本語風の「奈雪の茶」を中国語表記の「奈雪的茶」に変更し、読み方も日本語の「ナユキ(NAYUKI)」から中国語ピンインに基づく「ナイシュエ(NAIXUE)」に切り替えた経緯がある。当時、中国国産ブランドの人気が高まる「国潮」(グゥオチャオ)のもとで広がる「去日本」(脱日本化、日本的な特徴の除去)のトレンドに沿った措置として受け止められた。

出所:奈雪改名「Naisnow」!网友:不中不洋|奈雪的茶_新浪财经_新浪网

「Nai」という響きは適切?

ただし、「Naisnow」という英語名称はいま一つネット上の反応は芳しくない。どうやらその音や綴りにしっくりしないと感じたネットユーザーも少なくなさそうだ。日本人目線からしても、「Nai」という音は否定的な語感を持つ。英語圏でも“No”や“Not I”といったネガテイブな響きを連想させる恐れもあるかも知れない。

そもそも、3年前の「脱日本化」の過程で、可愛らしかった“の”を取り去り、「的」に置き換える措置を取ったのは適切だったのだろうか。人によっては読む順序が分からず、「雪茶奈的」と誤認してしまう可能性も否定できない。ブランドメッセージの伝達において混乱を招くリスクは看過できないだろう。

🔗7年目の「奈雪の茶」が“脱日本”ロゴ、反響は微妙

2022年11月まで「NAYUKI」でブランド展開していた


「Snow」を採用した背景は?

また、「Naisnow」という語尾に含まれる「Snow」は、ブランドの清涼感やピュアな雰囲気を表現しようとする試みと理解されるが、日本の老舗乳業メーカー「雪印」(Snow Brand)を彷彿させるのが気になるところだ。雪の結晶を模したロゴデザインは雪印ロゴミルク等で海外市場でもおなじみのシンボルとなっている。

両者のデザインにそれほど類似性は感じられない。すると、むしろ奈雪が意識したのは同じ中国国内の茶系ブランド「蜜雪冰城(MIXUE)」だろうか。敢えて英語のネーミングにしたのは、「脱日本化」のみならず、多店舗展開で先行するMIXUEに対する牽制の意図も潜んでいるのかもしれない。

NaiSnowのロゴと似ている? 画像出所:バージニア大学ゴーディーセンターおよび雪印メグミルク公式サイト

成功と失敗から学ぶネーミング

ブランド名は、発音、意味、記憶への残りやすさに加え、他ブランドとの類似性を避ける工夫が必要だが、自国市場と海外市場とでそれぞれ異なる名称を使う例もある。抖音(Douyin)が「TikTok」、拼多多が「Temu」、小紅書が「RED」などとしているのは、中国国内と海外とでブランド名を区別して市場展開した成功事例として挙げられるだろう。

一方、「茶顔悦色」が英語名を「Sexy Tea」とアピールしたことが物議を醸したように、文化的誤解や炎上リスクをはらんだ命名も後を絶たない。日本の「カルピス」が英語圏で「Calpico(カルピコ)」という名称でブランド展開しているのはよく知られることだが、グローバル市場における言葉の選び方は慎重を要する。

茶系飲料チェーンの市場競争が激化。昨年、奈雪、茶百道等が損益を計上

「気」と「氣」──漢字の訴求力

「元気森林」についても触れておこう。同ブランドは前述した「脱日本化」の社会トレンドを受けて、2020年以降に商品パッケージの「気」を中国簡体字の「气」へと変更したが、ECサイトを見たところ、台湾市場では依然として日本語漢字である「気」を使用している。敢えて日本イメージを持たせようという戦略なのか、あるいは国、地域ごとに異なる感性への対応かは明言されていない。

そういえば台資企業「元祖食品」は、日本語の音に由来する「Ganso」という表記を中国本土で維持しているのも印象的だ。日本風イメージをむしろ積極的に活用する姿勢と見ることができ、奈雪や元気森林とは対照的なアプローチとなっている。

元気森林は台湾エリアで日本語漢字の「気」を使用 出所:元氣森林, 官方線上商城 | 蝦皮購物

問われる言葉の設計力

もうひとつ補足しておきたいのは、日本では旧体字である「氣」が「気」へと簡略化された歴史にはさまざまな推察が存在することだ。継続する文化の分断と見なす見解さえ存在する。そういう事情はさておいても、台湾市場ではいっそのこと現地で使われる繁体字の「氣」を使うほうが好ましかったのではないかとの印象を抱く。

「気」と「氣」、あるいは「NAYUKI」と「Naisnow」。そんなブランド表記の相違点や変化には、さまざまな哲学がにじむ。あるときは経営てこ入れの旗印としての役目を担うこともあれば、あるときは消費者との関係性を再設計する行為として受け止められることもある。それゆえブランド名の刷新は、発音や表記、消費者の印象、商標リスクまでを見据えた「言葉の設計力」が大きく問われているといえよう。今後の「奈雪―Naisnow」の市場展開に注目が集まる。

(編集:耕雲)







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