狂犬病の発症件数、中国で17年ぶりに増加──日本外務省も海外での感染リスクに注意喚起

17年連続減少からの反転

出所:日本外務省「海外安全ホームページ」で公開されている2016年当時の狂犬病発生状況を示す地図
なぜ増えた?感染症対策の“空白地帯”
さらに、新型コロナウイルス対策に医療人材や財政資源が集中的に投入されたことで、狂犬病や破傷風など他の感染症への対策が後回しになったとの指摘もある(『新冠疫情下における感染症対応資源の分配に関する分析報告』2023年版)。
加えて、都市化に伴いペットの飼育者が増加する中で、新規飼育層における管理や感染症予防に関する知識・啓発の不足も、再拡大の一因と考えられている。

課題対応で“地域格差”
狂犬病ウイルスは、犬や猫など哺乳類の咬傷や引っかき傷から感染する。広東省梅州市では、2024年に3万件超の動物による咬傷が報告され、そのうち92.67%が犬または猫によるものだった[3]。こうした事例が示すように、現場では「暴露後予防(PEP)」の需要が急増し、ワクチンの備蓄体制や医療人員の逼迫が課題として浮上している。

外務省は海外安全ホームページを更新、アジアやアフリカを中心に発生が目立つ狂犬病に対する注意喚起をしている
求められる”予防リテラシー”
日本の厚生労働省による『狂犬病に関するQ&A』を参照すると、日本国内で人の狂犬病発症例は報告されていない。犬の登録義務や年1回の予防接種、放し飼いの禁止など、法制度が全国的に整備されており[4]、教育・啓発活動や医療機関との連携も含めて、再発ゼロの体制が維持されている。
一方、外務省が海外安全ホームページを更新、アジア・アフリカを中心に今なお狂犬病リスクが存在することに関して注意喚起を発出している。すでに見たように、中国で17年ぶりに発症件数が反転した。動物管理制度の強化とともに、一人ひとりの感染症リテラシーの底上げが求められている。(編集:耕雲)
参考
国家疾病预防控制局《2024年法定伝染病報告統計》,2025年1月発表 https://www.ndcpc.gov.cn/jbxx/tjsj/ 中国疾控中心《新冠疫情下の感染症対策分布に関する分析》,2023年白書 《梅州市衛健委通報》,2025年4月データ報告 厚生労働省『狂犬病予防法・動物愛護管理法に基づく制度概要』2024年版 日本外務省|海外安全ホームページ「感染症広域情報(狂犬病)」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2025C022.html
