減る園児、増える高齢者ーー“共育”基地に変身する廃園資源

“老幼共育”が描く「少子高齢化」のもう一つの未来
少子化の影響で幼稚園・園児の数が急減する中、教育インフラが次世代と高齢者のための新たな拠点として再定義されつつある。教育と福祉の融合が描く、“老幼共育”の未来に注目が集まる。

教育施設の減少と新たな使命
まず注目すべきは、中国における幼稚園数と園児数の著しい減少である。中国教育部の2024年統計によると、幼稚園数は2022年の28万9200か所から2023年に27万4400か所、2024年には25万3300か所と3年連続で減少し、その減少幅は年々拡大している。前年比で見ると、わずか1年で約2万1100か所の減少となった。
2024年における園児数は約3583万9900人とされる。時事通信の報道によると、1年間で208万9900人減少しており、少子化が急速に進行していることがわかる。(一方、国家統計局および民政部の複数の報告書(2024年1月・10月公表)によると、2023年末時点の60歳以上人口は2億9697万人で、全国人口の21.1%を占める。)

教育空間の再定義
こうした状況の中で、教育施設の再活用に関心が高まっている。浙江省金華市では、25年間にわたり運営されてきた省立幼稚園が、2023年に地域型の養老施設として転用された。このような事例は、「老幼複合(老幼共育)」の先駆けとして注目されており、深圳、太原、済南といった都市でも同様の導入事例があるとされる。
日本における老幼複合施設の先駆例は1987年まで遡るという。東京都江戸川区の「社会福祉法人 江東園」は、養護老人ホームと保育園、特別養護老人ホーム、高齢者在宅サービスの幼老統合施設として全面改築・合築され、高齢者と子どもの世代間交流を積極的に続けてきた。そんな日本で培われたノウハウが中国でも今後大いに生かされていくことが予想される。
資源再利用の妙──老幼共育の現実と課題
廃園、廃校となった教育インフラを福祉空間として再活用する動きが本格化していくのは意義深い。建設費や用地取得の負担を抑えると同時に、教育・福祉サービスを一体的に提供し、世代間の自然な交流を促進できるという点で、非常に合理的な取り組みだとされる。
とはいえ、「老幼複合(老幼共育)」を現実のものとして機能させるには、乗り越えるべき課題も多い。介護と保育の双方に対応できる専門人材の確保、施設のバリアフリー化といった物理的整備、行政や民間の運営主体間における責任の明確化、さらには安定的な財政支援体制の構築など、制度面・運用面の両方で解決すべき問題が山積している。

教育支出比率で他国の後塵を拝する日本
教育資源活用をめぐる課題は日本にも当てはまる。2004年度から2023年度までに、累計8850校が廃校となった。そのうち約75%は地域施設や企業用途に転用されたが、残る約25%は活用が進んでいない。「地域ニーズの欠如」(41.0%)や「建物の老朽化」(39.3%)が主な理由とされている(出典:文部科学省「令和6年度公立小中学校等における廃校施設の活用状況」)。
ここで注目しておきたいのが、教育への公的支出(比率)の低さだ。OECD『Education at a Glance 2023』によれば、日本の教育支出は2020年時点で政府支出全体の2.9%にとどまり、加盟国平均の4.6%を大きく下回る。

本来、教育はすべての世代が享受すべき社会インフラであり、“生涯学習”の視点から見れば、将来の社会を支える持続的な投資にほかならない。にもかかわらず、日本では少子化の進行を理由に教育予算の削減が続き、結果として地方の活力は削がれ、人的資本の蓄積でも障害となり、「失われた30年」と呼ばれる経済停滞の一因になったとの見方も現実味を帯びてきた。
教育と福祉が融合する“共育”の未来図
最後に、福祉と教育の融合を体現するユニークな「シニアカレッジ」の構想を掲げる、ある国際教育者のビジョンを紹介したい。その人物とは、上海朝陽義塾日本国際高校を創設し、現在も校長を務める孫源源氏である。
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孫氏は、「学び舎」を人が一生を通して成長し続ける場ととらえた。教育・住居・労働・介護を一体化させた空間の中で、高齢者が再び「学生」となり、知的好奇心に身を委ねることができる環境を構想した。教育とは受験や資格取得の手段にとどまらず、人間の存在そのものを深く問い直す営みであるーー孫氏の提唱する「学びの再定義」は、そうした哲学を土台に据えている。
