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2025-07-02

“冷菓バブル”崩壊──ハーゲンダッツに値崩れ圧力、主役は“理性消費”へ

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“冷菓バブル”崩壊──ハーゲンダッツに値崩れ圧力、主役は“理性消費”へ

上海市が6月29日に梅雨明けを迎え、気温は一気に上昇した。本格的な夏の訪れのなかで恋しくなるのが冷菓──アイスクリームだ。「冷菓の自由(雪糕自由)」や「冷菓の刺客(雪糕刺客)」といった、バブル的熱狂を象徴する言葉が中国のネットを賑わせたのはほんの数年前のことだが、いまや消費トレンドは一変している。

中国の“冷菓バブル”の終焉

2025年の中国、それは冷菓市場に“冷却の季節”が訪れた年であると言っても過言ではないかも知れない。数年前まで茅台(マオタイ)や鐘薛高(ジョンシュエガオ)といったブランドの製品が高価格帯で売られ話題をさらったが、消費者の価値観の変化とともにそれらの輝きは急速に色褪せた。“見せびらかす消費”の時代は幕を閉じ、「理性消費」が新たなキーワードとして台頭している。

“消費のダウングレード”が囁かれることも多くなったが、冷菓についてはそれだけで語ることはできない。「安ければよい」という発想を超え、「ちょっと贅沢」「少し健康的」「共感できる物語」といった複合的な要素が重視される。消費者の購買姿勢もより成熟に向かっており、むしろ納得感のある価格が提示されていることも重要な要素となる。

高級アイス神話の終焉

数年前、中国の若者にとって「冷菓の自由(雪糕自由)」はささやかな夢だった。気軽に高級アイスクリームを選べることが、都市生活を自己肯定することにもつながった。ハーゲンダッツは憧れの対象、鐘薛高はSNS映えの象徴、茅台(マオタイ)アイスは酒とスイーツを融合した奇抜な嗜好品としてもてはやされた感がある。

その熱狂は混乱も呼ぶ。「冷菓の刺客(雪糕刺客)」という揶揄を生み出すなか、財布を打撃する度を超えた価格のブランドが乱立し、過剰なSNS展開が行われていくと、いつしかアイスクリーム製品は祝祭の主役から皮肉や揶揄の対象へと変わっていく。そしていま、冷たく甘い贅沢に浮かれた、あの熱病のような時代を懐かしむ声はもはや過去の残響に過ぎなくなった。

ブランドの失速と転換点

プレミアムブランドのステータスを確保しようとしてきた各社の事業展開にも変調が表れる。茅台アイスは広州の運営チームが解散、北京の実店舗は名称変更され、ECのショップも相次いで閉鎖された。ブームを象徴した“白酒アイス”は、市場から静かに姿を消しつつある。

鐘薛高の転落もより劇的だった。年商10億元を誇ったブランドが、破産審査を受けたという。創業者がライブ配信で「焼き芋」を売って借金返済を図る姿は、「焼き芋(紅薯)刺客」としてSNSで再び揶揄の対象となった。華やかなブランド神話の裏に、経営基盤の脆弱さと資金繰りの限界が露呈したかたちだ。


ハーゲンダッツの縮小と国産ブランドの台頭

高級アイスクリームの老舗舶来ブランドであるハーゲンダッツもまた、市場の潮目の変化から逃れられなかった。中国における店舗数はピーク時の400店から250店以下に減少し、親会社・ジェネラルミルズ(通用磨坊、General Mills)は中国事業の売却を検討していると中国のネットメディアは報じる。

“洋物ブランド神話”が色褪せる一方で、国産ブランドの台頭が目覚ましい。現在の中国の若者に支持されているのは、「ちょっと風変わりで親しみやすく、ほどよく洒落ている」ブランドだ。たとえば「野人先生(野人牧坊)」(北京)の高級ジェラートや、「波比艾斯」(手作りワッフルシリーズ)などは、ネーミングのユニークさ、手の届く価格、そしてブランドストーリーが“情緒的価値”が高いものとして共感を呼び、確実にファンを増やしているとされる。

冷菓業界、“意味”を売る時代へ

中国の冷菓業界はいま、大衆化(第一の波)、高級化(第二の波)を経て、“意味化”という第三の進化段階にある。単なる味覚の満足ではなく、「自己肯定感」や「生活へのささやかなご褒美」といった情緒的価値が、購買の決定要因となっている。

ジム帰りに食べる低糖アイスや、残業後に手に取るスーパーフード入りジェラートは、その機能性以上に「気分を癒す存在」として位置づけられる。消費者はいま実体験の中で“共感できるアイス製品を求めている。「嗜好品のバブル」から脱し、意味を選ぶ冷静な時代へと移行するのはクールな変化と呼んでもよいかも知れない。(編集:耕雲)

◉中国冷菓市場・消費キーワードの変化(2019 → 2025)

年度
主なキーワード
傾向・背景
2019
冰淇淋自由、打卡、拍照、美颜包装
SNS映え志向、体験共有重視、見た目の魅力が重要
2021
雪糕刺客、联名爆品、网红雪糕
ブランドコラボ人気、話題性・SNS拡散力のある商品が注目
2023
零添加、低脂、植物奶成分
健康志向の高まり、自然派・ベジタリアン需要の増加
2025
性价比、理性消费、情绪价值
コストパフォーマンスと感情的満足度の両立が重視



 参考 







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