「西夏王陵」が世界遺産登録!映画『敦煌』で脚光を浴びた“幻の文字”と壮麗な王朝

「西夏王陵」が世界遺産登録!“幻の文字”の神秘、映画『敦煌』でも描かれた壮麗な王朝
2025年7月11日、パリで開催されたユネスコ第47回世界遺産委員会において、中国・寧夏の「西夏王陵(西夏陵)」が世界文化遺産に加わった。西夏は、かつてタングート族が築き、モンゴル帝国に飲み込まれ歴史の彼方に消えた王朝である。その王たちの眠る陵墓が、ついに世界遺産の仲間入りを果たした。

🗺西夏王陵、中国で60件目の世界遺産に
「西夏王陵(西夏陵)」が正式に世界文化遺産として登録され、これで中国の世界遺産数は文化遺産40、自然遺産15、複合遺産5の合計60件に達した。「現存あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する唯一の、あるいは少なくとも卓越した証拠を提供するもの」というユネスコの世界遺産登録基準の「基準(iii)」に該当するという。
今回の審議では、アジアからは「西夏王陵」以外に、韓国の盤亀川岩壁画、カンボジアの慰霊碑、ベトナムやタジキスタンの文化景観などの遺産が新たに登録されたと報じられているが、日本からの新規登録はなかった。
“東方のピラミッド”の見どころ
中国・寧夏回族自治区の首府である銀川市西郊にある賀蘭山。その山裾に点在する9基の皇帝陵と254基の副葬墓は、ピラミッド状に盛られた土の墓塔と石彫で構成される。タングート族の遊牧文化と仏教の影響が融合した造形美をいまに伝える。
敷地内にある西夏博物館では、出土品や壁画、碑文、西夏文字の実物が展示されており、文化的価値を体感できるスポットになっているという。

写真はイメージです(既存画像を元に加工)
🔡神秘のベールに包まれた西夏文字
西夏王朝が神秘のベールで包まれているのは「西夏文字」の存在があるからだろう。漢字のようでありながら、漢字ではない。会意と象形のバランスを絶妙に崩した直線と曲げが多い不思議な形状が特徴だ。
画数が多く、数字を書くにも筆を何度も往復させねばならない。ちなみにチベットを高原を挟んだ西南に位置するミャンマーでは、“角”がとれて丸みを帯びたビルマ数字が存在する。両者のコントラストはユニークだ。


西夏文字(上)の数字とビルマ数字
🎬西夏を描いた映画『敦煌』
1988年、井上靖の原作をもとに制作された日中合作映画『敦煌』は、西夏王朝の存在とその文字を日本人に伝える数少ない文化装置といえるだろう。監督は佐藤純彌、主演は佐藤浩市、西田敏行。時代は11世紀、舞台は敦煌と西夏。科挙に失敗した青年が西夏文字と向き合っていく姿は、歴史と人間の営為の交差点を描き出していた。
物語の時代背景となった11世紀はすでに遣唐使が廃止されており、日本には西夏と交流できるチャネルはなかった。しかし、時代が下り、西夏の存在を世界にアピールするうえで日本が一役買っているのはユニークなことではないだろうか。

映像・ドラマのレビューサイト「豆瓣」では8.4のスコアを獲得。「ダークホース歴史秀作番付(「冷门佳作歴史片榜」)では5位に付ける
📍銀川へ──“西の果て”へ向かう旅
石碑、写経などに刻まれた西夏文字は、今日では、AIやOCR(光学文字認識)技術によって速やかな解読が行われるようになっているとされる。たとえば、中国社会科学院・西夏学研究センターや寧夏大学などが中心となり、AIを活用して仏典の断片を高速で読み取り、類似形状の文字を照合・復元する作業が行われているという。
なお、西夏王陵を訪れる際のゲートウェイとなる銀川の空港や駅へは、上海を起点にすると空路で3時間強、鉄路(高速鉄道)で11時間あまり。西安からのアクセスなら所要時間は4時間強といったところだ。高速鉄道が普及する前は上海から西安に移動するだけで寝台車で丸1日かかった。そう思うと隔世の感があるが、神秘のベールに包まれていた“西の果て”は、この四半世紀だけでも格段に近くなっている。(編集:耕雲)

「西夏王陵」が世界遺産登録!“幻の文字”の神秘、映画『敦煌』でも描かれた壮麗な王朝
2025年7月11日、パリで開催されたユネスコ第47回世界遺産委員会において、中国・寧夏の「西夏王陵(西夏陵)」が世界文化遺産に加わった。西夏は、かつてタングート族が築き、モンゴル帝国に飲み込まれ歴史の彼方に消えた王朝である。その王たちの眠る陵墓が、ついに世界遺産の仲間入りを果たした。

🗺西夏王陵、中国で60件目の世界遺産に
「西夏王陵(西夏陵)」が正式に世界文化遺産として登録され、これで中国の世界遺産数は文化遺産40、自然遺産15、複合遺産5の合計60件に達した。「現存あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する唯一の、あるいは少なくとも卓越した証拠を提供するもの」というユネスコの世界遺産登録基準の「基準(iii)」に該当するという。
今回の審議では、アジアからは「西夏王陵」以外に、韓国の盤亀川岩壁画、カンボジアの慰霊碑、ベトナムやタジキスタンの文化景観などの遺産が新たに登録されたと報じられているが、日本からの新規登録はなかった。
“東方のピラミッド”の見どころ
中国・寧夏回族自治区の首府である銀川市西郊にある賀蘭山。その山裾に点在する9基の皇帝陵と254基の副葬墓は、ピラミッド状に盛られた土の墓塔と石彫で構成される。タングート族の遊牧文化と仏教の影響が融合した造形美をいまに伝える。
敷地内にある西夏博物館では、出土品や壁画、碑文、西夏文字の実物が展示されており、文化的価値を体感できるスポットになっているという。

写真はイメージです(既存画像を元に加工)
🔡神秘のベールに包まれた西夏文字
西夏王朝が神秘のベールで包まれているのは「西夏文字」の存在があるからだろう。漢字のようでありながら、漢字ではない。会意と象形のバランスを絶妙に崩した直線と曲げが多い不思議な形状が特徴だ。
画数が多く、数字を書くにも筆を何度も往復させねばならない。ちなみにチベットを高原を挟んだ西南に位置するミャンマーでは、“角”がとれて丸みを帯びたビルマ数字が存在する。両者のコントラストはユニークだ。


🎬西夏を描いた映画『敦煌』
1988年、井上靖の原作をもとに制作された日中合作映画『敦煌』は、西夏王朝の存在とその文字を日本人に伝える数少ない文化装置といえるだろう。監督は佐藤純彌、主演は佐藤浩市、西田敏行。時代は11世紀、舞台は敦煌と西夏。科挙に失敗した青年が西夏文字と向き合っていく姿は、歴史と人間の営為の交差点を描き出していた。
物語の時代背景となった11世紀はすでに遣唐使が廃止されており、日本には西夏と交流できるチャネルはなかった。しかし、時代が下り、西夏の存在を世界にアピールするうえで日本が一役買っているのはユニークなことではないだろうか。

映像・ドラマのレビューサイト「豆瓣」では8.4のスコアを獲得。「ダークホース歴史秀作番付(「冷门佳作歴史片榜」)では5位に付ける
📍銀川へ──“西の果て”へ向かう旅
石碑、写経などに刻まれた西夏文字は、今日では、AIやOCR(光学文字認識)技術によって速やかな解読が行われるようになっているとされる。たとえば、中国社会科学院・西夏学研究センターや寧夏大学などが中心となり、AIを活用して仏典の断片を高速で読み取り、類似形状の文字を照合・復元する作業が行われているという。
なお、西夏王陵を訪れる際のゲートウェイとなる銀川の空港や駅へは、上海を起点にすると空路で3時間強、鉄路(高速鉄道)で11時間あまり。西安からのアクセスなら所要時間は4時間強といったところだ。高速鉄道が普及する前は上海から西安に移動するだけで寝台車で丸1日かかった。そう思うと隔世の感があるが、神秘のベールに包まれていた“西の果て”は、この四半世紀だけでも格段に近くなっている。(編集:耕雲)
