中国・電子決済の覇権争いに新局面、動き出す新興勢力
新興勢力の台頭と市場の再編
長らくアリペイと微信支付(WeChat Pay)の二強体制が続いてきた中国の電子決済市場に、新たな潮流が押し寄せている。抖音支付(Douyin Pay)、京東(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)が次々に決済領域へ参入し、いまや群雄割拠の様相を呈してきたのだ。一方、PayPayとWeChat Payの連携がまもなく始まる。アジア全体で電子決済の勢力図が大きく塗り替わろうとしている。
抖音支付:エンタメから金融へ
バイトダンス傘下の抖音(ドウイン)といえば、短尺動画の代名詞である。だが今や、その裏側で「金融インフラ」への歩を着実に進めている。圧倒的なユーザー基盤とEC機能を武器に、決済領域に本格進出しているのだ。
2025年9月初旬の報道によれば、抖音支付はすでに生鮮配送アプリ「朴朴超市」やApple App Storeと接続。さらに一部の店舗では、スマート端末にかざすだけの「碰一下(タッチ決済)」を試験導入している。
背景には規制対応の先手がある。2020年に「合衆易宝」を買収してインターネット決済ライセンスを取得し、2023年にはオフライン決済に強い「聯動優勢」を取り込んだ。こうしてライセンス面の“ピース”を埋め、自社エコシステムを越えた拡張を可能にしている。
京東と拼多多も決済強化
京東(JD.com)はすでに400万以上の加盟店を抱え、取引手数料の引き下げを宣言。2025年にはマーケティング費用として100億元規模を投じ、微信支付よりも安い手数料体系を整える計画だ。
拼多多(ピンドゥオドゥオ)は、決済子会社「上海付費通」への出資比率を80%超に引き上げ、主要EC事業者として自前の決済ライセンスを固めた。これにより、淘宝・京東・拼多多・抖音といった中国EC大手は軒並み自社決済を揃え、取引の最終局面をコントロールできる体制を整えたことになる。
支払いは購買体験の“締めくくり”であり、ここを押さえれば顧客動線を独占できる。さらに取引データという宝の山が得られることもあって、各プラットフォーム戦略の要となっている。
PayPay × WeChat Payの接続:
一方、日本では2025年9月、PayPayがWeChat Payとの連携を発表した。全国のPayPay加盟店で、訪日中国人がWeChat Payをそのまま利用できるようになる。観光地の土産物屋から都市部の百貨店まで、インバウンド需要を取り込む環境が整った格好だ。
これは単なる利便性向上にとどまらない。中国で日常的に使われている決済手段が日本でそのまま使えることは、訪日客の消費を後押しする。日本の小売・観光業にとって、新たな顧客獲得チャネルとなる可能性は大きい。

老舗勢力の動向と新世代技術:
最老舗も健在である。アリペイはQRとNFCを組み合わせた「Alipay Tap!」を拡大し、数億規模の利用者を抱える。銀聯はクロスボーダー決済の標準化を推進し、国際展開を強化中だ。
さらに、中国政府主導のデジタル人民元(e-CNY)は2024年までに累計7.3兆元の取引を達成し、海外利用の実証も進められている。テンセントが実験的に導入している「Palm-tap(手のひら認証決済)」も含め、既存プレーヤー、新興勢力が入り乱れた次世代技術の導入が繰り広げられている。
電子決済の日中比較
覇権を握るのは誰か
こうして見ると、電子決済はもはや「支払い手段」ではなく、ユーザー接点とデータ資産を囲い込むための“戦略的ハブ”である。購買履歴や利用頻度といったデータは、広告配信や金融商品開発に直結する。プラットフォーム各社が巨額の投資をしてでも自前の決済を持ちたがるのは、こうした未来の収益源を確保するためだ。
日本ではキャッシュレス比率が42.8%に達し、デジタル円や円建てステーブルコイン構想も進む。中国と日本、歩みは異なっても「決済こそ次の覇権の主戦場」という共通認識が浮かび上がる。(編集:耕雲)
