蘇州で邦人母子含む3人が襲撃され負傷、「援護件数」から中国で暮らす安全度を再考
江蘇省蘇州市で6月24日、日本人の母子が中国人の男に刃物で襲われ、負傷する事件が発生した。中国で暮らす外国人が被害に遭うのは今月に入り2件目である。また、19日には上海地下鉄9号線の合川路駅で無差別刺傷事件が起きた。衝撃的なニュースが続くなか、在留邦人にとって中国で暮らす「安全度」がどの立ち位置にあるのか、外務省の援護件数データを参考に見ていこう。
外国人刺傷事件は今月2度目
江蘇省蘇州市で24日午後、日本人学校のスクールバスを出迎えていた日本人の母子と、スクールバスに乗っていた案内係の中国人女性が中国人の男に刃物で襲われ、負傷した。NHK等の大手メディアの報道によると、日本人の母子は命に別状はないが、中国人女性は重体という。事件後、蘇州日本人学校は25日に休校を決定し、中国各地の日本人学校でも警備が強化されたほか、在中国大使館、総領事館および領事部が在留邦人に向けて注意喚起を行っている。
ちなみに中国で外国人が襲撃被害に遭ったのは、10日に吉林省吉林市の公園で55歳の中国人男性が米国人の大学教員らを刺傷させた事件に続き2件目である。また、19日の朝ラッシュ時には上海地下鉄9号線の合川路駅(閔行区)で“無差別”刺傷事件が発生し、大きな波紋を呼んだ。
都市の安全度のものさしは?
容疑者の動機等、詳細な状況については後続の報道を注視していくこととして、中国の各都市の治安、安全度に対する関心が高まっている。果たして世界の主要国・地域と比較して中国の安全度はどれほどのものだろうか。
その測定において日本の外務省が発表する「海外公館による在留邦人の援護件数」の統計データも大いに参考になるだろう。海外在留邦人の援護件数を分析し、特に日本人が海外で直面するリスクの実態を明らかにすることで、世界各都市の安全度についてより具体的な洞察が行われている。
画像:援護件数の内容(世界):2022年(令和4年)海外邦人援護統計(2024年(令和6年)4月 発表)から
援護件数トップは英国
2024年5月時点の援護件数レポートは2022年のデータに基づくものである。2020年から調査方法が変更され、「所在調査」の件数が減少した結果、援護件数は2019年以前の数値より減少している。2022年に再び件数が増加したのは、新型コロナウイルス収束後に渡航が回復してきたためだ。海外渡航者数が増加すると事故や災害、犯罪による被害も増える。
援護件数の内訳を見ると、アジア地域では「傷病」「犯罪加害」「困窮」が、欧州では「窃盗被害」が、北米では「遺失・拾得物」がそれぞれ多くなっている。また、2022年の援護件数トップは在英国日本国大使館で、次いで韓国、シンガポール、デュッセルドルフ、ホノルルの順で多い。2012年の援護件数はトップの在上海日本国総領事館をはじめ中国の在外公館が上位にあったが、2018年以降はランキングから外れている。
2022年(令和4年)海外邦人援護統計(2024年(令和6年)4月 発表)のデータを元に編集部で整理・加工
中国は治安改善、援護件数が減少
これには中国国内で警察の取り締まり強化や監視カメラの増設などが功を奏したことはもとより、キャッシュレス決済やシェアリング経済の進行も大きな影響を与えているだろう。市民は多くの現金が入った財布を持ち歩く必要がなくなり、駐輪場に放置した自転車が頻繁に盗まれることも少なくなった。
なお、昨今では、フィリピンやタイなどの国で援護件数が増加しており、在フィリピン日本国大使館の援護件数は2020年以降のランキングで常に上位にある。一方、欧米地域の常連は在英国日本国大使館や在ロサンゼルス日本国総領事館であり、経済活動の活発化や観光客の増加による影響が見て取れる。
潜在リスクの再認識を
こうした治安改善を背景に、スリや置き引き、窃盗などの犯罪による被害に遭う在留邦人も大きく減少したと推察するのは容易である。自然災害や社会的混乱に巻き込まれたり、交通事故やガス中毒、感電といった事故に遭遇したりした事案も目立たなくなった印象がある。少なくとも中国の主要都市部は、日本人が安全に暮らせるインフラと社会環境が十分に確保されているといえるだろう。
それだけに今回、蘇州で邦人母子が刺傷事件に遭遇した衝撃は大きい。法的トラブルや経済活動に伴うリスクなど在留邦人を取り巻く脅威は数多く、通信手段を使った詐欺の横行も社会問題になっている。中国に在住する日本人にとっての安全リスクは姿形を変えて依然として至るところに潜伏している。(編集:耕雲)
参考
中国 蘇州 日本人学校のバスが襲われ 母親と子どもがけが 中国人女性が重体 襲った男は確保 | NHK | 中国
日本人の援護件数の多い在外公館上位20とは?| 海外旅行と保険のスゝメ (sompo-japan-off.jp)