中秋商戦たけなわ、"27元論争"が映す「月餅」の相場観

中秋節を象徴するスイーツといえば月餅中秋商戦たけなわ、"27元論争"が映す「月餅」の相場観
中秋節を彩る月餅市場。老舗ブランドが堅実な人気を保つ一方、新興ブランドが革新的な製品で消費者の注目を集めている。一方、人気ブランド「好利来(Holiland)」の月餅価格を巡る議論がネット上で展開されている。🔗【音声付】中秋商戦たけなわ、"27元論争"が映す「月餅」の相場観
1. 好利来月餅、高額論争の真相
人気ベーカリーブランド「好利来(ハオリーライ、Holiland)」の月餅が、その価格設定を巡り大きな議論を巻き起こした。特に「蛋黄红蓮(蓮の実と卵黄)」月餅の単品価格27元(約540円)は、多くの消費者に「高すぎる」との印象を与え、インターネット上で活発な意見交換がなされている。一部のネットユーザーは、グラム単価で比較した場合、好利来の月餅が他の類似商品より著しく高価であると指摘し、「月餅刺客」と揶揄する表現まで現れた。
この現象は、「メリハリ消費」がトレンドとなる中で、コストパフォーマンスを重視する消費者が商品の「価値」をどのように評価するかという、より深い問題を提起していると言えそうだ。好利来の店員は、高品質な小麦粉、厳選された塩漬けアヒルの卵、高品質なクリームを使用しているため、製造コストが上昇すると説明している[1]。

好利来月餅の価格がネットで議論に
2. バラ売り単価27元、その値打ちは妥当か
1個27元という価格が客観的に「高価」であるか否かは、多角的な視点から分析する必要がある。好利来が主張するように、高品質な材料の使用にこだわれば、製造コストは必然的に上昇する。また、添加物不使用の製法や、特定のフレーバーの人気、さらには月餅自体の重量も価格に影響を与える要素となる。
むろん、ブランドイメージや顧客からの信頼も価格に反映される要素であり、製造工程における手作業や、"無形資産"ともいうべき独自技術の採用もコスト増の要因となる。こうして見ると、消費者がスーパーマーケットで手軽に購入できる月餅と比較すれば、バラ売り単価27元が一概に高価と断じることはできないという見方もある。ただ、一部の試算では、好利来の「蛋黄红蓮」月餅の直接原価は約7.24元/個とされ、これに物流損耗や人件費(特に手作業工程)を加味すると、総コストは約10.44元/個と目されている[2]。

蛋黄红蓮月餅の断面
3. 老舗と新興、月餅市場の二極化
中国の月餅市場は、長年にわたり培われた老舗ブランドと、新たな潮流を取り込む新興ブランドが共存する二重構造を呈している。光明邨、杏花楼、美心といった老舗は、広式、蘇式、京式、滇式など、地域に根ざした伝統的な製法と味覚を堅持し、その伝統的価値が消費者に強く支持されている。上海では光明邨の鮮肉月餅が人気を博すほか、「嫦娥奔月」のパッケージで知られる杏花楼は代表的なブランドだ。後者は、伝統的な味覚だけでなく、「台式牛乳冰沙月餅」といった中欧折衷の味覚の商品を投入し、伝統と現代の融合を試みている。
元祖食品の「雪月餅」やハーゲンダッツの「アイスクリーム月餅」といった洋菓子ブランド勢力が市場に新風を吹かせていることも注目に値する。若年層を中心に支持を集め、月餅の消費シーンを多様化させているのだ。健康志向の高まりに応じた低糖・無脂月餅や、功德林の净素月餅のようなヴィーガン対応製品も登場しており、消費者の多様なニーズへの対応が進んでいる。
主要月餅ブランド比較
以下の表は、上海でなじみのある月餅ブランドの特徴をまとめたものだ。各ブランドの歴史、特色、価格帯を比較することで、月餅市場の多様性と各ブランドの位置づけを理解することができる。
| ブランド名 | 創業地 | 設立年 | 人気商品など |
|---|---|---|---|
| 杏花楼 (Xinghualou) | 上海 | 1851年 | 看板商品: 杏花楼月餅(小豆、蓮の実、ナッツなど) 価格帯: 見栄え重視で箱代が高い傾向) 特徴: 上海の老舗ブランド。国家級無形文化遺産に登録された製法。伝統的な広東式月餅が中心。国営企業で安定した生産体制。近年は革新が足りず、若者には人気がない傾向。 |
| 美心 (Maxim's) | 香港 | 1956年 | 看板商品: 流心奶黄月餅(カスタードクリーム月餅)、伝統的な蓮蓉月餅 価格帯: プレミアム価格帯(種類や購入場所により異なる) 特徴: 香港を代表する大手ブランド。革新的な「流心」シリーズが若者に人気。世界中に展開する高い知名度。 |
| 好利来 (Holiland) | 北京 | 1992年 | 看板商品: 五仁月餅(ナッツ餡)、ローズ月餅 価格帯: 情報なし 特徴: 北京発の新興洋菓子チェーン。北京式月餅の代表格。洋菓子のノウハウを活かした商品開発。 |
| 元祖 (GANSO) | 台湾 | 1981年 | 看板商品: アイスクリーム月餅、フルーツ系月餅 価格帯: 178~388元/箱(6~8個入り) 特徴: 台湾発の革新的なブランド。アイスクリームやヨーグルトなど斬新な餡が特徴。伝統と現代的な要素を融合。 |
4. 「天価月餅」規制と市場の健全化
中国政府は近年、市場の健全な発展と消費者の利益保護を目的として、「天価月餅」と形容される非常に高額な月餅に対する規制を強化している。2022年6月に発表された「『天价』月餅の抑制と業界の健全な発展促進に関する公告」では、単価500元を超える箱入り月餅の重点監管、包装層数の上限、他商品との混載禁止、包装コスト比の上限などが設けられた[3]。さらに、腐敗や浪費助長を防止するため、フカヒレなどの高価な食材を用いた贈答品としての利用も禁止された。
しかし、その一方で、好利来のように価格の適正性をめぐって議論が巻き起こることもある。また、月餅を巡る消費トラブルの報告も後を絶たない。商品の虚偽表示や添加物の不適切な使用、原材料の偽装といった品質問題が顕著で、実際に、卵黄も蓮蓉も含まれていない商品が「双蛋黄蓮蓉月餅」として電子商取引プラットフォームで販売されるケースも確認されている。これは、オンラインプラットフォームにおける商品表示の曖昧さと、プラットフォーム側の監督責任の欠如を浮き彫りにしていると言える。
5. 月餅市場の未来と消費者の選択
中国の月餅市場は、伝統の継承と革新の追求という二つの潮流が交錯し、多様なニーズに応えながら進化を続けている。老舗ブランドは、その歴史と信頼を背景に伝統の味を守りつつ、現代的な要素を取り入れ、新興ブランドは、型破りな発想で月餅の新たな可能性を切り拓いているのだ。
しかし、月餅が本来の大衆消費財としての位置付けに回帰し、透明性を高めた市場で取引されるまでには、まだ克服すべきハードルが存在する。ECの消費トラブル対策では、サプライヤー企業に対しては一層の品質管理と情報開示を、プラットフォーム事業者には監督責任の強化をそれぞれ促していくことが求められるだろう。(編集:耕雲)
❖杏花楼の月餅、日本でのお値打ちは?
日本のオンラインストアや中華食材店で中秋節シーズンに販売される月餅は、現地価格と比較して高価になる傾向がある。これは、輸入コスト、関税、国際輸送費、日本の流通マージン、そして為替レートなどが加算されるためであり、現地価格の3倍になることも珍しくない。例えば、杏花楼は価格が比較的手頃なイメージがあるものの、Amazon.co.jpでは月餅3個セットが2,698円となっており、1個あたり899円(約450円)という計算になる[4]。

Amazon.co.jpでの杏花楼月餅の価格
情報源
[1] 好利来月饼一块售27元引争议,好利来回应. (2025, September 27). Sohuhttps://www.sohu.com/a/939282754_120347736
[2] 好利来 27 元月饼被指太贵,门店回应用料更好,这个价格合理吗?你会买吗? |知乎 https://www.zhihu.com/question/1954971858697942182
[3] 关于遏制"天价"月饼、促进行业健康发展的公告. (2022, June 10). 国务院部门文件.https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2022-06/10/content_5695124.htm
[4] Amazon.co.jp. (n.d.). 杏花楼 月餅 https://www.amazon.co.jp/%E6%9D%8F%E8%8A%B1%E6%A5%BC%E6%9C%88%E9%A4%85/s?k=%E6%9D%8F%E8%8A%B1%E6%A5%BC%E6%9C%88%E9%A4%85
