新幹線運行停止に備えた“迂回路”模索、もしも“ふたまた”線が使えたなら……
東海道新幹線の豊橋―三河安城間で22日、保守用車両が衝突脱線し、同新幹線の浜松―名古屋間が終日運行停止となった。新幹線神話が揺らぐ中、乗客は代替ルートを模索した。混雑は浜松や豊橋駅でもピークに達したと見られ、宿を取る人も相次いだという。非常時におけるスムーズな移動手段の確保と今後の対策が問われる。
東海道新幹線ストップで混乱
東海道新幹線の豊橋―三河安城間の上り線で22日未明、保守用車両同士が衝突して脱線した。この事故により、東海道新幹線は同日、浜松―名古屋間の上下線で運転を見合わせた。翌23日は午前6時の始発から全線で通常通り運転を再開したものの、正確なダイヤと安定した運行が売りだった新幹線神話が揺らぐ結果となった。
新幹線の運行が名古屋―浜松間で休止した22日、名古屋―新大阪間では新大阪を始発とする「ひかり」と「こだま」が各駅に停車し、名古屋まで運行した。一方、東京からの乗客は浜松まで新幹線で移動し、その後在来線で名古屋まで向かうか、北陸新幹線を利用するか、飛行機での移動に切り替えて京都・大阪を目指したとされる。
豊橋、浜松で混雑ピークに
今回のダイヤの混乱を受け、JR浜松駅と豊橋駅は大勢の人々が在来線への乗り換えでごった返したと報じられた。豊橋―名古屋間はJRの新快速や名鉄の特急等が多く運行されており、新幹線が止まってもすぐに交通が麻痺することはない。乗り換えの手間はかかっても、それほどタイムロスは生じないため、ダメージは大きくなかったと想像される。
東海道のパイプが遮断寸前のリスクに追い込まれたといったら大げさだが、今回の事故で最も問題となったのが「豊橋―浜松」区間だったのではないだろうか。「豊橋―名古屋」間とは異なり、この区間を鉄道で移動するには東海道本線に頼るほかない。奇しくも周辺で「祭り」イベントが続き、人の流動が増えていたことも混雑に拍車をかけることになった。
もしも二俣線があったなら…
もし、今回新幹線の運休の原因となった保守用車両の脱線事故が豊橋―三河安城間ではなく、掛川‐浜松間、もしくは浜松‐豊橋間で発生したらどうなっていただろうか。高速バスといった代替交通手段に頼らずに“ふたまた(二股)”をかけられる鉄道移動のオプションとして、天竜浜名湖鉄道が注目されたことだろう(もっとも所要時間は長くなるが…)。始発駅である掛川駅から利用してもよいし、浜松駅からなら遠州鉄道鉄道線で西鹿島駅まで移動して乗り換えることができる。終点の新所原駅は豊橋とは指呼の間にある。
天竜浜名湖鉄道の路線図:掛川市ホームページから転載
国鉄時代に遡れば、天竜浜名湖鉄道の前身である二俣線(ふたまたせん)は県境を越え、豊橋駅まで乗り入れていた。同線はもともと東海道本線を補完するバイパス線であり、空路はもとより道路交通が整備されていなかった時代(1940年)に、東海道本線が空襲により寸断されるリスクに備えて建設された。学校が夏休みに入り、祭りイベントの見物や帰省で人の移動が激しくなる中、天竜浜名湖鉄道が二俣線時代と同じく豊橋まで乗り入れていたのなら、乗客の流れを分散させ、幾分なりとも混雑の緩和に役立ったのではないかと推測される。
豊橋駅の風景。東海道本線のホームおよび駅構内の通路から国鉄時代の二俣線ホームを臨むことができる(上)。一般乗客がホームに入ることは不可能だ(下)
理想の迂回ルートはどれ?
今回の新幹線の終日運休という事態を受け、中央リニア線の早期開通を望む声が高まった。しかし、現時点では東海道というゴールデンルートで新幹線が遮断された場合、どんな代替交通手段があるのかを心得ておきたい。(もちろん、鉄道での移動にこだわる必要はないのだが、“鉄道王国”のポテンシャルは最大限活用したいところだ。)
以下は「東京‐名古屋」間の代替ルートである。東海道新幹線の「のぞみ」を利用した場合(約1時間40分)と比べると、所要時間は大幅に長くなる。主要駅のバスターミナルから発車する高速バスを利用するのといずれが効率的なのかも検討する必要がある。
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<鉄道を使った迂回ルート例>
1)北陸新幹線+特急「しらさぎ」(東京〜金沢~名古屋)
東京から北陸新幹線で敦賀へ、そこから北陸本線の特急「しらさぎ」で名古屋に向かうルート。
所要時間: 約6時間
東京駅発(北陸新幹線)→ 敦賀駅着: 約3時50分
敦賀駅発(特急「しらさぎ」)→ 名古屋駅着: 約1時間40分
2)中央本線特急「あずさ」+中央本線特急「しなの」(東京〜塩尻~名古屋)
東京から中央本線特急「あずさ」で松本方面に向かい、塩尻から特急「しなの」で名古屋へ向かうルート。
所要時間: 約5時間30分
東京駅発(中央本線特急「あずさ」)→ 塩尻駅着: 約2時間40分
塩尻駅発(中央本線特急「しなの」)→ 名古屋駅着: 約2時間
3)北陸新幹線+JR高山本線(東京~富山~名古屋)
東京から北陸新幹線で富山へ、そこからJR高山本線を利用し名古屋へ向かうルート。高山の観光地を経由する。
所要時間: 約6時間
東京駅発(北陸新幹線)→ 富山駅着: 約2時間10分
富山駅発(JR高山本線)→ 名古屋駅着: 約3時間50分
4)北陸新幹線+特急・快速(東京〜敦賀~米原〜名古屋)
東京から北陸新幹線で金沢へ、そこから米原ルートで名古屋に向かう。もちろん関西へも快適にアクセスできる。
所要時間: 約6時間
東京駅発(北陸新幹線)→ 敦賀駅着: 約3時間50分
敦賀駅発(北陸本線)→米原駅着:約50分
米原駅発(東海道新幹線)→名古屋着: 約30分
北陸エリアパスの利用範囲:JRパス公式サイトから
有資格者ならJRパス利用が便利
迂回路を使うと移動距離が長くなり、運賃も高くなる。その点、JRグループがインバウンド向けに販売するJRパスは、新幹線を含めた一定期間の自由な乗り降りが可能で便利である。同パスは外国人観光客向けの販売が基本であり、日本人が利用するには海外の在外公館に在留届を出して10年以上連続して居住していることを証明する必要がある。そのため購入資格を持つ人は限られてくるが、一時帰国中に鉄道を使った長距離移動を予定している人なら重宝するだろう。
ただし、JRパスの料金は2023年秋に改定され、普通車用で7日間のパスが5万円となった。毎日利用したとしても1日あたりのコストは7,000円を上回る。一方、「JR東日本・北陸エリアパス」(北陸アーチパス)は関西から北陸、新潟、東京方面への旅行をカバーしており、料金も7日間で30,000円(普通車用)とリーズナブルだ(1日あたり約4,300円)。北陸新幹線経由で成田空港と新大阪間を往復すれば元が取れる計算になるが、最初から「迂回路」にフォーカスした利用方法が果たして“リスクヘッジ”として適切かどうかは分からない。(編集:耕雲)
参考
東海道新幹線 始発から全線で通常通り運転再開 | NHK | 鉄道
ASCII.jp:【東海道新幹線】不通区間を迂回して東京ー名古屋ー大阪を移動する方法