日鉄と宝鋼が合弁解消、『大地の子』への反応で日中両国に温度差
日本製鉄が中国宝鋼集団との合弁事業を解消すると発表した。日本では『大地の子』の文字が見出しに踊る報道が目立ったが、中国のネットの反応は冷めていた。中国では同作品を知る人が限られており、来年で放映から30年を迎えることに対する関心も薄い。日中両国の経済協力の象徴だった作品も、このまま風化してしまうのだろうか。
背景に中国EV攻勢も
日本経済新聞、読売新聞など大手メディアは、日本製鉄が23日、中国宝武鋼鉄集団の子会社「宝山鋼鉄」との自動車向け鋼板の合弁事業を解消すると発表したと報じた。背景には、中国の電動車市場の急成長と日系車の市場シェア減少がある。中国市場における日系車のシェアは2021年が22.6%、2023年が17%、2024年上半期が14.9%と減少を続けている。三菱自動車は現地生産から撤退し、日産自動車は工場を閉鎖、トヨタやホンダも規模縮小に着手した。
合弁が解消されるのは「宝鋼日鉄自動車板(BNA)」で、同社は2004年に正式に事業を開始した。日本製鉄は2021年に宝山鋼鉄を特許侵害で提訴したが未解決であり、一方で米国市場を取り込むためのUSスチール買収計画が米国議員の反対に直面するなど波風に立たされている。日本のメディア各社は、日本製鉄が中国の鋼材生産能力を削減し、米国やインドに資源を集中させる方針であると伝えている。
『大地の子』の文字が踊る
今回の合弁解消に関する報道で、日本ではネットニュースの見出しに『大地の子』の文字が目立った。日本製鉄は1972年の日中国交正常化後、1978年の日中平和友好条約締結に伴う経済協力の象徴的なプロジェクトとして宝山の高炉建設を支援し、その日中共同プロジェクトに関わった戦争孤児を主人公にした小説を山崎豊子氏が書き上げ、『大地の子』として発表した。
その後、同小説は1995年にNHKが同局放送70周年記念番組として日中共同で制作して放送すると大きな反響を得た。ドラマでは歴史的な出来事や社会情勢がリアルに描写され、戦争孤児である主人公の陸一心が前述の製鉄プラント事業に参加し、様々な困難に立ち向かう姿が感動的に描かれている。名優たちの卓越した演技もさることながら、中国人の養父との間の愛情、日本人の実父との絆などを緻密に描いた奥深いストーリーに多くの視聴者が感情移入し、共感を得た。
中国のネットに温度差
ところが、このドラマに対する関心度が日本と中国とでは大きな温度差がある。中国ではドラマの正式放映が行われなかったため、認知度が極めて低いのだ。朱旭や蒋雯麗、蓋麗麗などの有名俳優が出演し、長春、大連、北京、内モンゴル、上海、重慶などで大規模なロケが行われたにも関わらず、“知る人ぞ知る”存在に留まっている。例えば、主人公の陸一心は大連理工大学(ドラマでは架空の名称として“大連工業大学”が使用)を卒業した設定だが、同市の日本語学習者でこの作品について知る人は多くない。
中国の検索エンジン「百度」で『大地の子』を検索しても情報は少なく、無関係な画像が添えられていることさえある。ちなみに、2021年にTBSが日曜劇場枠で新板『大地の子』を企画、佐藤健主演で制作が内定されていたが、コロナ禍や制作のハードルの高さからお蔵入りになったと伝えられている。結果として、日本のエンタメ事情に敏感な中国人のトレンドウォッチャーに作品名を知ってもらう機会を逸したといえる。
中国の検索エンジン「百度(Baidu)」で「大地の子(大地之子)」を検索しても、関連情報にヒットすることは少ない
日中経済交流の象徴
日中両国の友好を象徴するプロジェクトとして、中国国務院が「上海新鉄鋼工場の立地選定、建設規模及び関連問題に関する報告」を批准し、上海宝山での鉄鋼工場の建設を決定したのは1978年3月11日のことである。3月11日といえば、日本人にとっては東日本大震災という大災害の日として記憶に刻まれているが、日中の経済交流においては重要な日であった。このような日中両国の経済協力の象徴とも言える出来事をテーマにした名作『大地の子』が、同番組放送30年を前に風化のリスクにさらされているとしたら寂しい限りだ。(編集:耕雲)
参考
日本製鉄、「大地の子」のモデルとなった中国・宝山鋼鉄との合弁事業解消へ…日系EV苦戦で決断 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
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