Original / 導入記事|2026-06-21
豆腐は英語で tofu と綴る。中国語の dòufu ではなく、日本語の「とうふ」に由来する形で世界に広がった。食べ物は原産地の札をつけたまままっすぐ世界へ出ていくわけではない。移動の途中で、誰かの舌に合わせて名前を変える。上海在住30年の視点から、食の越境と記憶の味を辿るエッセイ。
豆腐は中国から日本へ伝わった食品とされる。だが、世界の食卓では日本語の衣をまとって広がった。英語圏で語られる豆腐は tofu であり、和食やベジタリアン料理に使われる白い食材という印象をまとっている。一方、中国語では dòufu——カタカナにすればドウフに近い発音だ。この小さなずれが、食文化の越境をめぐる大きな問いを照らしている。
華僑の人がスーパーで豆腐を探し、店員に「dòufu はないか」と尋ねたところ、案内された先は dog food(ドッグフード)だったという笑い話がある。発音のずれが生む可笑しさとしては、妙に説得力がある。
中国で暮らしていると、豆腐が大豆食品の連続の中にある一形態であることがわかってくる。豆漿、豆花、干豆腐、臭豆腐、腐乳——大豆をすり、濾し、固め、水を抜き、発酵させ、乾かす。その過程のどこを切り取るかによって、まったく別の食べ物になる。中国人にとって豆腐は、完成品というより、大豆が変化していく途中の一つの姿なのかもしれない。
日本の豆腐にも日本ならではの厚みがある。高野豆腐や乾燥ゆばを紹介すると、中国人の友人は感心した。水分、口当たり、香り、保存法、食べ方の細部に、長い時間をかけた工夫がある。トーフとドーフのあいだに勝敗はない。あるのは、食べ物が別の土地に移るたびに、名前と意味を少しずつ変えるという事実だ。
この教材では、食文化の越境をテーマにした中国語表現を音声で学びます。「豆腐」「豆漿」「皮蛋」「腐乳」など食品関連の語彙から、「越境」「文化のねじれ」「記憶の味」を語る表現まで、日常会話とビジネス中国語の両面で使える語彙を習得します。
このページは note元記事(耕雲) をもとに制作した中国語学習教材の導入ページです。