
危機対応で戦う相手を間違えた?──「西貝」102店閉鎖、炎上の後に
中国西北地方の郷土料理を提供することで知られる外食チェーン「西貝(西貝莜麺村/XIBEI)」が2026年第1四半期に全国102店舗の閉鎖を進める見通しだ。発端は「調理済み食材」をめぐる論争だったが、真の致命傷は料理そのものではなく「説明の設計」にあったとされる。外食ブランドの信頼は、どこで、どのように壊れるのか。
❖第1四半期に段階的に102店舗閉鎖完了へ
2026年1月15日、SNS上で西貝の内部資料と閉店リストが拡散し、全国102店舗の閉鎖(総数の約3割)と約4000人への影響が報じられた[1] [2]。対象は一線・二線都市に集中しており、ネット上で流通したリストによれば、上海19店舗、北京10店舗、深圳8店舗、広州5店舗などが含まれる。ただし同じリストに掲載されている店舗でも「閉店通知は未達」とするケースがあり、数字は「リスト由来」として扱うべきだろう。
一方、創業者の賈国龍氏はSNSで「スクリーンショットの情報は概ね正確」とし、閉鎖は「第1四半期に段階的に完了する」との趣旨を示したと伝えられる[2]。ここで重要なのは、閉鎖が「一括」か「段階的」かという点ではない。市場が先に反応したのは損益状況ではなく、ブランドの「**信用の目減り**」だった点である。
❖争点は「半調理」ではない──透明性は「主材料」になった
論争は2025年9月、インフルエンサーの羅永浩氏が「調理済み食材なのに高額だ」と不満を述べたことから広がった[3]。企業側は「セントラルキッチンでの下処理」と「調理済みパック」の区別や定義を前面に打ち出したが、世論が求めたのは概念論争ではなかった。「結局、自分は何を食べているのか」を、一般消費者が自分の言葉で理解できる形に翻訳する作業だったのだ。
中国メディア「澎湃新聞」の論考は、この衝突を「125日間の世論闘争」と表現し、価値観レベルの対立にまで膨らんだ経緯を整理している[2]。信頼危機の引き金は「不衛生の証拠」だけではない。「**説明の不在**」でも、ブランドは転ぶ時代になったのである。
❖危機対応で戦うべきは批判者ではなく「不確実性」
西貝の教訓は明快だ。危機対応で戦う相手は批判者ではない。「分からないことが増えていく」という**不確実性**である。外食チェーンが今すぐ実装すべき施策は三つある。
●**第一に**、透明性の最低基準を自社で定義し、先に提示すること。 用語(セントラルキッチン、半加工、調理済み食材)の定義、店舗内工程の範囲、主要メニューの供給フローを「一般語」で固定ページ化する。
●**第二に**、危機時は「概念」ではなく「手順」を示すこと。 「何が事実か」より「どこを見れば確認できるか」を提示し、第三者検証や監査への導線を用意する。
●**第三に**、価格設定の根拠を語れるようにすること。 沈黙は「高い」の証拠になってしまう。説明可能な範囲で、品質・手間・物流・廃棄・衛生投資のどこにコストが乗っているかを言語化する。
❖「味」で負けたのではない。「情報設計」で負けたのである。
サイゼリヤは「数字と更新」で不安を殺す
対照的に、「調理済み食材」を使用していることが明らかでも批判の矢面に立たされずにいるのがサイゼリヤだ。一人当たりの支出は約50元と伝えられ、若年層・学生の外食ニーズを広く取り込む価格帯にある[4]。「イタリアン版・沙県小吃(庶民派ローカルチェーンの代名詞)」という通称は、そのポジショニングを象徴している。
もちろん同ブランドの未来が無条件で前途洋々というわけではない。出店加速による客流の分散が既存店売上を押し下げているとの指摘もあり、飽和気味の大都市から地方(二線・三線都市)へのシフトが今後の成長の成否を握るとの見方もある[4]。それでも、日系イタリアンがここまで中国市場で躍進を果たしたことは特筆に値する。
サイゼリヤの強みは、透明性を理念で語るのではなく、**仕組みと更新**で積み上げる点にある。消費者は全工程を見ていなくても、「説明が更新され続けている」ことに安心する。透明性とは、ガラス張りの厨房ではなく、「**情報の公開と更新頻度**」なのである。
❖「体験が信頼を上書きする」スシローの行列
もう一つのスシロー現象にも触れておきたい。2025年12月6日の上海初進出時には初日14時間待ち、そして3号店が開業した今月17日も13時間待ち・600組超と話題を一身に集めた[5]。中国本土79店舗、1皿10元前後という明快な価格設定は「**コストパフォーマンス**」の象徴として機能している。
ここで効くのは説明資料ではない。店頭の行列が「**社会的証明**」として機能し、「同じ体験が再現できる」という期待が信頼を固めるのだ。外食チェーンに注がれる信用は、説明だけでは作れない。体験で補強され、反復で固定される。
参照情報源
[1] 新华网(来源:界面新闻)「西贝将大规模关停102家门店,集中在一二线城市」2026-01-15
https://www.news.cn/food/20260115/29c72069d9fe44d5985514017b682ea4/c.html[2] 澎湃新闻「西贝将关闭102家门店,贾国龙:一季度陆续完成,离职员工工资一分钱不差,储值卡随时退」2026-01-15
https://m.thepaper.cn/newsDetail_forward_32392095[3] 证券时报网「西贝要关闭102家门店!贾国龙和罗永浩“论战”背后…」2026-01-18
https://www.stcn.com/article/detail/3598759.html[4] 株式会社サイゼリヤ「2026年8月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026-01-14
https://www.saizeriya.co.jp/files/260114-541q%E6%B1%BA%E7%AE%97%E7%AB%AF%E4%BF%A16.pdf[5] テレ朝NEWS「スシローが上海で店舗拡大 13時間待ちの大人気」2026-01-17(報道)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000479438.html